ソーシャルリクルーティングにおいて、昨今注目を集めているビジネスSNSのLinkedIn(リンクトイン)。そんなLinkedInを中心としたSNS運用支援を手がける株式会社アースメディア 代表取締役CEOである松本さんにLinkedInを中心としたソーシャルリクルーティングの進め方について話を聞きました。
人材業界の最先端を走る松本さんは現在の採用市場をどのように見ていらっしゃいますか?
大前提として労働人口が減少しているため、これまでと同じスタンス・手法での採用は難しいと思います。
採用手段である採用サービスも互いに機能面やサービスがかぶっており、「これだけ使ったら採れる」という時代ではないと言えるでしょう。
確かに採用手段は多様化している気がしますね。弊社も採用代行を事業としていますが、お客様から依頼される業務内容も多種多様化している気がします。
採用側の手段だけでなく、候補者の転職活動方法や意思決定の軸について変化はありますか?
会社規模や事業シェアといったハードの側面だけでなく「その事業に共感できるか」「一緒に働きたいか」といったソフトの面も以前よりは増えてきたのかなと思っています。
最近「共感」というキーワードをよく耳にするようになりました。採用活動におけるキーワードとした場合、採用担当者はどのようにして採用活動の中で「共感」を創出していけばよいのでしょうか?
そうですね、私は「ソーシャルリクルーティング」というSNSを使った採用活動のコンサルティングを行っているのですが、TwitterやLinkedInを使って情報発信をすることで「共感」してもらえるチャンスは広がると思います。何も発信しなければそもそも共感するネタがありませんから。
なるほど確かにそうですね。しかしながら、採用人事がSNS上で情報発信することについて企業側からGOサインが出ないのでは……と思ってしまうのですが、いかがでしょうか?
まさにそこですね、今は完全に二極化していると言えます。企業カルチャーの情報発信に積極的なスタートアップやベンチャーは、人事だけでなくその他のメンバーもどんどん情報発信しています。
一方、情報統制に厳しい多くの大企業はほぼ使っていないと言えます。企業アカウントがあって、bot(ボット※)でPRを流すだけになっている企業が多く存在します。
※ボット…コンピュータープログラムの総称。SNSにおいては一定時間ごとに自動的に投稿する処理を行うものがある
また、「ソーシャルリクルーティング」として情報発信する際には、採用人事の「個人」として発信することが重要なのですが、多くの企業が「企業アカウント」の運用でなんとかなると誤解している節があります。
下図分類の通り、「誰かの役に立つ有益性の高い情報」であるとともに、自分ごととして「自己開示がある」ツイートじゃないと見てもらえません。一般論かつ正論、納得感はあるといった内容では、共感は起こらないのです。
それよりも、たとえ企業規模が小さくても、共感を集められた人事のアカウントの方が、有名な大企業の公式アカウントよりも影響度が大きい、なんてことは日常茶飯事です。小さくても大きい会社に勝てる、まさに「採用のジャイアントキリング」が実現しています。
発信において重要なポイントとしては、発信する情報を以下の通り9:1にすると良いです。
【9】Give(誰かに有益性の高い投稿):【1】Take(自社のPR、今回の場合は求人への誘導)
まずは、このバランスを意識しながら発信してみてください。
9:1?それはだいぶGiveの精神が必要ですね。正直、続けられる人はそれほど多くないのでは?と思ってしまいますが、採用人事のみなさん、続けられるものなのですか?
最初は難しいと思われるかもしれませんが、毎日考えて採用業務を行っていれば、絶対に毎日何かしらの気づきや反省、改善点があるはずです。それをノウハウ化して言語化して投稿する、それだけです。
求人媒体に掲載だけして大量応募をたださばく、という採用人事はさすがに今の時代はいないと思います。どの企業も何かしら苦労・工夫をして応募を集めていると思うので、その失敗だったりだとか成功だったりをノウハウ&言語化して、本人の気持ちを乗せて開示すればいいんですよ。
あとは、継続力です。習慣化するまでの初めの数ヶ月が重要です。なので私のコンサルティングも最初は毎日運用のフォローをします。
どうしても投稿する内容がイメージがつかないという方は、中途採用サクセスの記事を参考にしてみてください。
なかなか毎日投稿となると大変かなと感じてしまいますが、発信先のツールとしては何がよいのでしょうか?
もうLinkedIn一択ですね。
え、Twitterじゃないんですね。
いや、Twitterもぜひ使ってもらいたいんですが、TwitterとLinkedInでは属性とか使い方がちょっと異なるんですね。
下の図に分類されるように、LinkedInはTwitterのパブリック性と、Facebookの実名制といったメリットを兼ね備えているのでめちゃくちゃお勧めです。繋がりが増えやすいし、投稿も拡散されやすく、かつ、どこの誰が反応してくれているのか明確にわかるので。
でも、LinkedInって外資系やリクルーターが多いイメージがあります。一般的な採用活動でも使えるんですか?
それが誤解でして。いまめちゃくちゃ広がってきていますよ。(公式データはLinkedInさんから聞いて欲しいですが)かなりの日系ど真ん中の人材も実名で登録されていますよ、たとえばメガバンクの支店長の方が使っていたりします。
え、銀行系は厳しそうなイメージだったので意外です。
そもそも「SNSを使ってはダメ」と個人の行動を社則で縛るのは厳しいと思いますし、そういうのは縛れないという雰囲気も大手企業の中でも広がっているんじゃないですかね。
あと、LinkedInって勝手に転職のSNSだと思われている気がしますが、普通に学生さんたちもいますからね。
え、学生も使っているんですね、それは知りませんでした。
はい、いわゆる旧帝大・早慶上智の中でも情報感度が高い学生には利用が進んでいますね。彼らは自ら情報発信をして、スカウトを待っている状態ですね。
なるほど、でもそういったメガバンクや情報感度の高い学生って、メジャーで就職人気がそこまで高くない企業の採用人事が頑張ってアプローチしても、なかなか反応してくれないんじゃないですかね?
まさしくそこが従来の考え方の限界でして、今日お伝えしたかったことなんですけど「ソーシャルリクルーティング」は企業公式アカウントとして活動するのではなくて採用人事個人として活動したほうがよいんですね。
あくまで個人として、共感され、信頼される人になれるかどうか。
個人であれば、現時点ではまだほとんど競合がいない状況なので、今からやればいくらでもブランディングは確立できますからね。ブルーオーシャンですよ。個人が大企業に勝てる、なぜなら企業公式アカウントで「共感」は基本的に生まれないからです。
やるなら、今だと
はい、LinkedInが採用の全てではありませんが、LinkedInすら使えない採用人事は相対的に市場価値が下がる時代が来ると思います。
逆に「LinkedInを使いこなしている」=個人として、そして採用人事として影響力が高まっている状態になるので、採用市場における希少性を自分自身の力で高めていけることにもつながると思いますね。
そういった採用人事の希少性が高まると、その人事自体が「他社からスカウトされて人材流出につながるのでは?」という心配をする経営者がいると思うんですが、そういった経営者の方にこそ大きな考え方のシフトを提言したいです。
他社からスカウトされるぐらいのピカイチ人材を採用人事に配置しないと、そもそも優秀な方は採用できない。そういう時代ですよ、と。
優秀な営業を人員としてそろえて、売上を上げていきたいなら、その営業と肩を並べるぐらい優秀な共感力、発信力がある人を採用人事に配置するべきかと。
もちろん、給与待遇もそれに伴う必要があると思います。
共感力・発信力が採用人事として必要なスキルとなり、企業ではなく個人としての信頼による採用活動が求められるこの時代。LinkedInは採用人事の存在意義自体を再定義する、そのような採用大転換期のど真ん中に位置するSNSだと思いますね。
なるほど。本日はソーシャルを使った採用手法だけでなく、今後の採用人事のキャリアのあり方にまで言及していただき非常に勉強になりました。お時間ありがとうございました。
アースメディアではLinkedInを中心としたSNSによる採用活動を支援しています。周囲から支持を得ることができる、ファン作りにつながる発信方法を中心に「LinkedIn運用コーチ」を提供。受講者の投稿内容の分析なども行っています。
松本社長が専属で担当しているサービスにご興味がある方は、以下リンクより詳細&お問合せください。
—————————-
松本淳(まつもと じゅん):1997年、同志社大学法学部卒業後に新卒でインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。人材紹介事業の立ち上げ等を経験した後、2003年にHRテックのジョブダイレクトを創業。2008年にリクルートへ事業譲渡した後は、社団法人を設立し社会課題に取り組む。
現在は、株式会社アースメディア 代表取締役CEOとして、LinkedInを中心としたソーシャルリクルーティングの可能性を追求し続けている。
企業ホームページ:https://earthmediacorp.com/