Uber配達員から「人情」が消えた。ある配達員の回想 | キャリコネニュース
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Uber配達員から「人情」が消えた。ある配達員の回想

写真:筆者撮影

Uber配達員は、基本的に横のつながりがない。集まって研修・教育を受けたりする機会もなく、同じような境遇の人と話すチャンスは少ない。僕は2017年にUber配達員を始めたが、当時は配達員の数が少なく、ネットにも情報が少なかった。その代わり活発だったのが、現場での情報交換だ。(取材・文:飯配達夫)

配達員たちは店舗での料理待ち、信号待ち、お届け先で鉢合わせたときなど、どちらともなく挨拶をして情報交換した。少数派ゆえの仲間意識というのだろうか。その日の売上状況、悪質な店舗、ムカついたエピソード、よく鳴る(注文が入る)エリア、便利な小道具の情報など、ノウハウを教えあっていた。

見知らぬ者同士でも、違うフードデリバリー会社の所属の人とですら、「配達員」という共通項さえあれば、つかの間の連帯感を感じることが出来たのだ。

運営公式のオフ会もあった

UberEats日本法人2周年記念パーティの様子(写真:筆者撮影)

ちなみにUberもコロナ前は、配達員を招いてオフ会を開いていた。海外企業らしく華やかなパーティーで、参加者は抽選制だったが、SNS 上で名の知られた配達員とリアルに会える場であり、Uber社の幹部社員と直に話せる貴重な機会でもあった。話こそしなかったが、現社長の武藤友木子氏を見かけたこともある。

当時Uberの社長は配達員にとって、「その気になれば、会える」距離感にいた。文字通り目に見えるコミュニティーが存在していたのである。

外出自粛で利用者が激増

こんな世界がコロナ禍で一変した。既にフードデリバリーは世間で認知されていたが、外出自粛に伴って利用者が増加した。と同時に職にあぶれた人たちが大量に流入し、にわか配達員が目に付くようになった。

配達員はありふれた存在になり、配達員同士の挨拶も見られなくなった。以前だったら、見知らぬ者同士でも会釈くらいするのが普通だった。しかしいまは素知らぬふりである。Uberの認知度向上と反比例するように、配達員の間から人情が消えた。かつてのコミュニティーは SNS や YouTube上でかろうじて生き延びているに過ぎない。

運営公式のオフ会が開かれることもなくなり、配達員向けの「公式グッズ」も手に入りにくくなった。企業が成長すると、人間関係は希薄になっていく。それは末端の配達員にも当てはまるのだった。

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