男性が担当した現場は、複数のゼネコン(建設会社)が共同で一つの建築事業を請け負う「JV共同企業体」だった。ところが、一緒に施工管理をする相手企業の仕事ぶりは、手抜き工事のうえに「下請けにリベートを要求、(作業員の)人数も水増し」するなど、不正が横行する信じられない状況だったという。
男性はそこで「週に1回しか寮に帰れず」「毎日指示がコロコロ変わり、予定外作業で事故が多発」という過酷な働き方を経験した。相手会社の不正が気になり
「自分の会社に内容を報告したが、なかなか動いて貰えず、ようやく他の工事現場に異動になったが同じゼネコンとのJVで内容も同一だった」
というから、もともとの勤務先に伝えてもまったく状況は変わらなかった。男性は困惑しかない現場をこう振り返る。
「品質に関するミスは仕方が無いケースもあるが、マトモにリカバリーせず品質不良のまま建物が完成していく」
「姉歯問題(編注:2005年の構造計算書偽造事件)が発覚する数年前のことだが、姉歯が可愛く思える内容」
なんと「予定外作業でコンクリート打設中に床が落ちて」きたこともあったという。そのときは「作業員が鉄筋に足が挟まったお陰で一緒に墜落しなかった」というが、何が不幸中の幸いなのか訳がわからない。いずれにしても作業員はケガをしているのでは……。男性は
「とにかく施工管理って美味しいの?って感じなくらいに、手抜きと言うより適正施工管理を知らないんだろうなぁという感じでした」
と当時の相手企業を評している。極めつけは、ミスの隠ぺいが常態化していたと分かるこんなエピソードだ。
「残業していると夜中の1時にFaxが受信され、中身を見ると(外部の)検査で構造的な品質ミスが指摘され、ミスをしないようにしましょうではなく『ミスが見つからないようにしましょう』という内容だったのには乾いた笑いが出てきました」
男性は「当時Twitterがあれば毎日の話題提供に事欠かなかったと思います」と冗談めかして綴ったが、実際は憔悴しきっていたようで
「辞めた数日後に病院で診察を受けたら身体を壊していましたし、数か月はココロのバランスが取り戻せなかったです」
と報告した。現在はまっとうな会社で働いていると信じたい。