都内の中堅私大に通っていた女性。校門前のコンビニは、たいていの学生が日常的に利用していたそうで、大変賑わっていたそうだ。というのも……。
「学食が信じられないほどにマズいんです。売店も学生数に対して品数が少ないので、昼食はコンビニでおにぎりやサンドイッチを買うのが当たり前でした」
そんな学生で賑わうコンビニを仕切っていたのが50代の男性店長だったのだが、この評判がすこぶる悪い。学生からは「勘違い野郎」と言われていたようだが、その理由とは……。
「自分が学生たちの兄貴分かなにかと勘違いしているみたいでした。男子学生が弁当を買ってると『そんなんで足りるの?もっと食べなきゃ』とかいうのは当たり前です。スーツを着てれば『どこに就職するの?』と根掘り葉掘り聞いてくるし『もっと勉強しなきゃ』とか、まったく意味のないアドバイスをしてくるんです。それも、お昼どきでレジが行列している時でもおかまいなしです」
20歳前後の学生は、50代からみたらちょうど、自分の子どもと同年代だ。もしかしたら、それが暴走を加速させていたのかもしれない。
「とにかく常にタメ口です。おまけに男子には『安いおにぎりばっか買うなよ=xとか、買い物にダメ出しまでしていましたね」
男子学生相手でも十分ヤバいのだが、女子学生相手には、さらに暴走がハンパなく加速するそうで……。
「友達同士のちょっとした会話とかにも聞き耳を立てていて、遊びにいく相談をしていると『俺も一緒にいきたいな』とかいってくるんです。美容院にいけば『髪切った?俺はロングのほうが似合うと思うよ』とかいうし『今日は化粧が濃くない?デートなの?』とか。お前には関係ないし、オジサンにヘアスタイルの善し悪しとかいわれるのって、ホントにキモいですよね」
それでも、学生たちがこのコンビニの利用を続けていたのは、店長を除けばごく一般的な店だったからだ。
「レジに店長が立っていると、ハズレだな≠ニか思いました。みんな平気で『うわ、レジが店長だよ』とかキモく思っていることを隠さなかったのも聞こえていたはずですけど、まったくへこたれてませんでしたね」
そんなある日、女性はトリハダが立ちそうな経験をしてしまう。
「ジュースを買ってお金を渡したんです。そうしたら、両手をグーにして前に出して『お釣りどーっちだ』と満面の笑顔でいうんですよ」
イラっとして「どうでもいいから、早くして下さい」というと、素直にお釣りを渡してくれたが、さらに一言「今日は機嫌が悪いのかな=vと微笑まれたという。ィ
「店長の見た目はくまのプーさんみたいな雰囲気だったんですが、自分の中では女子大生には可愛くて頼りになるオジサンと思われたいという願望があったのかもしれません」
その謎願望を満たすために、格好の舞台だったコンビニ。しかし、その桃源郷にも終わりのときがやってきた。
「2軒となりのビルに別のコンビニが入居したんです」
大学の後輩からは「客は一気に新しい方に流れた」と聞かされたそうだが、なんの不思議もないだろう。
結局、そのトンデモコンビニのほうも、建物取り壊しと同時に閉店。驚くほどキモかった店長の行方は「誰も知らない」そうだ。