クレーマー客の勝手な要求にすべて応える必要はない。とはいえ、その場を収めるために泣く泣く多少の自己犠牲を払ってしまうこともあるようだ。今から10年ほど前、学生時代にコンビニでバイトしていたという30代前半の女性(東京都)は、こんなわがままな客と遭遇した。
「タバコを購入された70代くらいの男性のお客様でした。当時は『ワンカートン購入でライター1本無料』のサービスをしていたのですが、その人が買ったのは1箱のみです。それなのに『すぐに吸うからレジの横のライターをくれ』と言い出しました」
客の勘違いかもしれないが、サービスの範囲を超えて普通に売っているライターを無料でよこせと言うのだから図々しい。その後、店側はどう対応したのだろうか。編集部では女性に直接話を聞いた。
「店長が自分の私物ライターを渡すという始末」
もちろん女性はサービス内容の説明をした。
「私は『ライターはワンカートンを購入したとき以外は有料です』と伝えました。すると『気が利かない』と怒りだしてしまいました」
納得できない高齢男性の怒りは恐ろしい。レジには女性一人だけで、他には店員がいない時間帯だった。やむを得ずバックヤードにいた店長に事情を話しに行ったという。
「店長は温厚な男性で、当時20代後半とかなり若かったですが、仕事ぶりは丁寧でした。でも、結構いつも疲れていた様子が印象に残っています」
そんな店長は、この日も疲れていたのだろうか。怒り続けるクレーマー客に対してこんな対応をとった。
「店長が自分の私物ライターを渡すという始末でした。お客様は何も言わず当たり前のようにそれを受け取って、そのまま持って帰られました。店長は貸すだけのつもりだったと思いますが、特に返してくれとも言わなかったですね。諦めたのだと思います」
その後、店長が何かを言っていた記憶はないというが、「ちょっと苦笑いだったのが印象に残っています」と振り返った。店長の私物ライターはどこにでも売っている普通のものだったようだが、もちろんタダではない。店長はクレーマー客と無駄に争うのを避けたかったのだろう。
店内飲酒を注意したら「病気だから仕方ない」と言い出す客も
コンビニに訪れる迷惑客はもちろんこの件だけではなかった。
「店内で購入したお酒をその場で開けて飲酒を始められた男性もいました。飲食スペースなどない普通のコンビニなので、注意したところ『病気だから仕方ない』と開き直られました」
と印象的な迷惑客を回想する。20代の店長は、こうした迷惑客やクレーマー客に対して普段どういう対応をしていたのだろうか。
「店長自身はいつも謝って対応していました。ただし従業員には『極端なクレームは受け流していい』と言っていたのを覚えています。でも本当に文字通り受け流すと余計にクレームになりますので、謝りつつ大袈裟に謝罪をしないようし、埒が明かないと思ったら店長を呼んでいました」
店長はスタッフに対して過度な我慢を強いることはなく、最後は自身で収める形をとっていたようだ。
「基本クレーマーの方は年配の男性が多かったのですが、大体はある程度クレームを入れるとそのまま帰っていく方が多かったです」
とは言うものの、不満の矢面に立つのは大変だろう。女性はクレーマー客について、
「今回の話は10年以上も前ですが、今も当時も、何故、怒ったら欲しいものが手に入るというクレーマー発想になるのか疑問です。怒ってもないも変わるはずがないのですが」
と疑問を口にした。
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