当時斉藤さんが所属していた店舗は、チェーンの中でもかなり初期に建てられた古い建物で、店内や事務所の数か所で雨漏りがするような状態だったという。
「何度か本社に修理依頼をしていたもののなかなか対応してもらえなかった中で、運悪く関東地方に大型の台風が直撃します」
その日は朝から土砂降りで、郊外の店舗に来客はほぼない。斉藤さんは商品が濡れないよう店内設備を移動し、清掃していた。そこへパートから声がかかる。
「主任! 事務所で雨漏りしてます!!」
駆け付けると、天井からかなりの量の雨水が書類棚に向かって落ちていた。バケツを置いても、すぐにいっぱいになってしまう。そこで斉藤さんは、ごみ袋からかき集めたペットボトルを材料に、1本の“道”を作った。天井から染み出る水がその道を伝って流しに流れるようにしたのだ。
ペットボトルの雨どいを自作する作業にかかった時間について、斉藤さんはこう振り返る。
「台風でお客もまず来ないような天候でしたので、パートさんに売り場でゆっくり商品整理なんかしてもらってる間に、ペットボトルを切っては貼ってを繰り返していました。なので、たぶん3、4時間以上はやってたと思います」
もっとも、店内の雨漏りもひどく、パートも売り場の掃除に時間を取られていたという。
「長時間売り場を空けて雨漏りの補修をしたため、始末書提出を命ずる」
完成したペットボトル雨どいを写真に収め、改めて本社に修理を依頼した斉藤さん。さすがにひどいということで、後日ようやく修理業者が入ることが決まった。ところが――。
「なんでだよ!!」
本社からの通知メールを見て、思わず店内で大きな声を上げてしまったという。そこにはこう書かれていた。
「『主任〇〇は、店舗営業中でありながら、長時間売り場を空けて雨漏りの補修をしたため、始末書提出を命ずる』というものでした」
修理依頼を放置しておきながら、店と書類を守った社員を処分するとは、あまりに理不尽な仕打ちだ。
始末書5枚で罰金5万円でも「報奨金で挽回」
斉藤さんが当時勤めていた会社では、「業務上の失敗に限らず、上司の指示に従わなかったときや、ひどいときには上司の気分次第でも始末書を書かされた」という。しかも始末書1枚につき1万円の“罰金”があり、半年分がまとめて賞与から差し引かれる仕組みだった。
それでも斉藤さんの心が折れなかった理由は、賞与に半期の売り上げに応じた報奨金制度もあったからだ。
「始末書5枚で罰金5万円でも、売り上げ報奨金で10万取れればプラス5万になるという考え方でした」
10年間で差し引かれた罰金は合計99万円にのぼるが、それを上回るインセンティブを得ていたため、差し引きはプラスだったという。
ただ、この件に関して斉藤さんは、「理不尽に唇を噛みながら始末書を提出しました」と語り、かなり凹んだことを明かしている。斉藤さんはこの数年後に転職し、この店舗はすでに閉店しているということだ。
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