【ヒアリ問題】外来種駆除の長い道のり 沖縄では約20年の歳月をかけてウリミバエ根絶に成功
さて、ヒアリ関連のニュースを見ていると、僕などはセアカゴケグモ騒動のことを思い出してしまう。1995年に大阪で発見されたこのクモは、元々オーストラリア原産であったが、最近の調査では既に全国42都道府県で発見されており、既に定着しきった印象をおぼえる。
オスは毒をもたないが、メスは神経毒を有しており、結構由々しき事態だが、今では特に対策を講じている自治体もそう多くない。もちろんそれは日本で死亡事故が起きていないことに起因するんだろうけども、喉もと過ぎれば何とやらなのか、という気がしないでもない。
外来種は今、海や山、河川に湖沼、それから町の中にまでわんさと定着している。そのため、元々日本にしか生息していなかった生物が、その分布を脅かされているという状況になっている。
しかし、一方で完全に近い状態まで、外来種の侵略を食い止めたという事例もある。その成功例が沖縄にあった。
かかった費用は204億円、放射線を使ってウリミバエを見事根絶
県の病害虫防除技術センターのサイトなどによると1919年、沖縄県八重山列島に東南アジア原産のウリミバエの繁殖が確認された。さらに10年後の1929年には宮古列島。1970年には久米島、そしてとうとう、1972年には沖縄本島に、その分布が拡大していった。
ウリミバエはその名のとおり、ハエである。しかしその被害は甚大なもので、様々な果物に卵を産みつけ、幼虫が果実を食い荒らすという虫害をもたらす。現地の農家にとっては、これは非常に頭の痛い事態だった。
このままでは農家の存続も危うい。そこで1972年10月にとられたのが、ウリミバエの根絶実験事業であった。まず繁殖している大量のオスのウリミバエを捕獲し、放射線をあて、生殖機能をなくさせる。そしてそのまま殺すのではなく、これを再び野に放つのだ。
生殖できなくなっているオスが交尾をしてもメスは卵を有せない。数世代かけるごとに、徐々にその個体数は減っていくということになる。これを根気良く続け、204億円ものコストをかけて実に625億匹ものオスに放射線をあて続け、1993年にとうとう根絶を達成したのである。
もっとも、この方法は海外では失敗例も多く、よほど念入りにやらなければいけないという。
まさに執念がないと、実を結ばない計画だ。日本でも繁殖可能な外来種は数多い。そうした種が万が一日本で定着すれば、その根絶はやたらと困難になるし、手法を誤れば在来の別の動物にも被害を及ぼしてしまう。
個人的には今のヒアリ騒動、数年後には鎮静化して、結局日本にヒアリだらけになっているような気がしないわけでもないが、今ならまだ分布もまさに水際。ここで食い止めないと、これまで日本での繁殖を許してきた多くの外来種被害の二の舞になってしまうだろう。
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