静岡鉄道、「就活サイト」からの募集を停止 エントリー数より「志望度高い学生」ねらう
静岡鉄道は1月16日、2016年度の新卒採用から学生向け就活情報サイトでの「エントリー受け付け」を停止すると発表した。
就活サイトには従来どおり企業概要などを掲載するが、説明会等のイベント参加や選考試験の受け付けは、1月にオープンした「自社採用ページ」にすべて統一するという。果たして、その意図はどこにあるのだろうか。
「入社を熱望する学生と向き合う時間を増やしたい」
同社は2009年度の新卒採用から、就活サイトへの掲載を開始した。するとそれ以前と比べて、入社に興味を示す学生のエントリー数は3倍に増加したという。
しかしエントリー数と比例して、選考試験や説明会を予約した学生の不参加率が、年を追うごとに増加してしまった。さらに大量エントリーへの対応で、会社側が「一人ひとりの学生に向き合う時間が限られてしまう」という問題が生じてきた。
16年度の採用活動は、広報活動時期が従来の12月から3月に繰り下げられる。これに伴い採用活動計画を見直す中で、「企業の思いに共感し、入社を熱望している学生と向き合う時間を増やすため」に、今回の変更に至ったのだという。
「ただ、エントリー数は昨年比で約3分の1に減る見込みです。就活サイト掲載開始前のエントリー数に戻るのではないかと推定しています」(人事担当者)
従来の採用活動では、まず応募者の「母集団」を形成することが重要だとされてきた。先立つ応募者がいなければ選考もできず、採用活動が成り立たないという考え方からだ。
しかし近年「一括エントリー」など気軽な応募ができる就活サイトの機能により、弊害を指摘する声が増えている。NHKの特集番組で、3万のエントリーを4人の採用担当者でさばく製薬会社や、一括エントリーで「応募の記憶ない」という学生が紹介されたこともあった。
手間を惜しまない「挑戦できる学生」に期待
今回の静岡鉄道のような課題は、他の企業に通ずるところがあるかもしれない。同社の人事担当者も、今回の採用活動変更による応募学生の変化に期待しているという。
「エントリーへの気軽さはなくなりますが、その手間を惜しまずに『当社の情報を知りたい』と思ってくれる学生は、志望度が高いだろうと思います。採用ホームページのメッセージや紹介されている事業・仕事に共感してくれて、『こんな仕事を成し遂げたい』と自分から挑戦できる学生に期待しています」
2月からは冬期インターンシップや、社長が登壇する「トップセミナー」など、同社を深く知ることのできるイベントも予定されている。
就活生側にも、これまで「100社エントリーは当たり前」「数撃ちゃ当たる」という風潮もあった。しかし静岡鉄道のようなコンセプトの採用が増えれば、高い志望度が感じられる深い企業研究が要求される可能性もあるだろう。
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