犯罪歴、指詰め有無の記入欄がある履歴書に「こんなの書けるか!」のクレームも 受刑者専用求人誌、創刊から2年 | キャリコネニュース
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犯罪歴、指詰め有無の記入欄がある履歴書に「こんなの書けるか!」のクレームも 受刑者専用求人誌、創刊から2年

専用履歴書(一部)

専用履歴書(一部)

非行・犯罪歴のある人の雇用を考える企業の採用支援を行うヒューマン・コメディ社は2018年から受刑者専用求人誌『Chance!!』を発行している。主に刑務所や拘置所、保護施設に配布しており、今年3月には第9号を発行した。

前科者の採用を前提としているため、求人情報の募集要項には「業務の内容上、採用が難しい罪状・病気」などと記載されている。付属の専用履歴書には、非行・犯行歴や入れ墨・指詰め有無の記入欄があるなど、他の求人誌と大きく違う。

ヒューマン・コメディ社の三宅晶子代表に、創刊からこれまでについて話を聞いた。

創刊2年で320件の応募 課題は”スムーズな手紙のやりとり”

今回発刊の9号に掲載されている企業は26社で、職種は建設作業を中心に車販売や塗装工、ドライバーなどだ。三宅代表は「創刊号の13社から少しずつ掲載企業がふえて、刑務所内でも存在が知られるようになりました」と話す。ただ、現状については、

「新型コロナウイルスの影響で建設業(資材等)が入らなくなってストップする現場が出てきます。そうなると人を採用する余裕が一時的になくなりますね」

と語る。とはいえ発刊から2年で、360件の応募があり、72人の採用内定があった。刑務所内にも就労支援制度はあるが、利用者は1施設で年間30~40人程度。支援を受けない人が大半だという。同誌を通じての採用件数は好調と言えるが、刑務所内での”就職活動”は中々スムーズにいかないという。

「基本的に企業とは手紙でのやりとりになります。刑務所に電話して面会しに行っていいかと聞いても『身内でないなら当日にならないとわからない』と言われることが多いので、行かないとわからないんです。そのため不確定な予定のために事業主が会いに行く日取りも決まらず、保留状態になることもありました」

ここ1年で応募数も増え、「対応が細やかにできませんでした。待っている人に申し訳なかったです」という。この点をカバーするため今年3月からは業務提携をして増員し、事業主と求職者のやりとりが円滑に行えるようサポートするという。

自分と向き合う専用履歴書、書き上げるのに1週間かかった人も

三宅代表の元には受刑者から多くの手紙が寄せられる。

「今までで750人からお手紙をもらいました。問い合わせの手紙や、返事を考え込んでしまう内容の手紙もあり、すぐ返すことが出来ないものもありました」

中には「出所してからも読みたい」「バックナンバーも読みたい」というものもあったが、クレームも寄せられたという。付属の専用履歴書に関することだ。

専用履歴書には氏名や住所などのほか、少年院や刑務所など施設内での自分の行い、犯した事件のきっかけや背景、犯罪歴、再犯の可能性はあるか、反社会勢力との関わりなどについての記入欄がある。

「なので『こんなこと書けるわけない!』という声もありました。自分と向き合う必要がある履歴書なので書き上げるのはキツく、ハードルが高いと思います。中には履歴書をかきあげるのに1週間かかったという人もいます」

今号から事業主が希望すれば同社を通さず直接の応募も可能となり、専用履歴書を書かずに応募する人も出てきたが、「やはり企業側は専用履歴書の内容を知りたいですよね」と語る。

「事業主は罪状だけを見ているわけではありません。自身が犯した罪について、自分でどう受け止めているか、これからどう生きていこうと考えているかを見ています。内省が進んでいて、人や環境のせいにしない人は再犯の可能性も低いように感じています」

昨年12月、三宅代表は同誌経由で6人を採用した企業の忘年会に参加したという。その際のことを、「近況を伝えてくれる人もいれば、『三宅さんのおかげです。ありがとうございます!』と言ってくださる人もいました」と嬉しそうに話す。

「やっぱりChance!!で仕事が決まってがんばって働いているという話を聞くのは嬉しいです。また事業主側も『労働力がほしい』だけではなく、例えば自分も前科があるけどがんばって会社を作って、今度は自分が前科者の支援を行ったり、応援したりするようになった社長さんに会えるのは嬉しいですね」

新型コロナの影響で中断しているが、今後は全国の刑務所に赴き、同誌を置いてもらい利用してもらうよう”お願い”に行くという。三宅代表は「今年は掲載企業50社、採用内定者数延べ100人を目標に活動して行こうと思います」と話した。

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