日本でこれから「ライブコマース」を成功させるために TikTokライバー桜川シュウの頭の中(後編) | キャリコネニュース
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日本でこれから「ライブコマース」を成功させるために TikTokライバー桜川シュウの頭の中(後編)

スマホひとつで生配信が始められる「ライブ配信アプリ」。前編に続き、ライブ配信を職業にするトップライバー(TikTok LIVEクリエイター)の桜川シュウさんに話を聞いた。Pocochaでの成功を足がかりにTikTok LIVEへの進出を図ったシュウさんは、コンテンツの作り方を大幅に切り替えたという。

今後の企業案件としては、配信者がモノを売る「ライブコマース」に期待が集まるが、現役ライバーからはどう見えるのか。プロのライバーが職業として継続するための業界の課題を含め、率直な考えを語ってもらった。

つらい現実を忘れさせてくれる「エンタメの世界」を作りたい

桜川シュウ:プロのライブ配信者(ライバー)。月9ドラマ「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)に出演するなど女優やテレビCMモデルとして活躍していたが、コロナ禍を機に芸能事務所から独立しライバーとしての活動を開始。PocochaやTikTokで活躍するトップライバーとなる。

桜川シュウ:プロのライブ配信者(ライバー)。月9ドラマ「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)に出演するなど女優やテレビCMモデルとして活躍していたが、コロナ禍を機に芸能事務所から独立しライバーとしての活動を開始。PocochaやTikTokで活躍するトップライバーとなる。

――前編では、コロナ禍をきっかけにPococha(ポコチャ。DeNA運営)でライバーになった話をお聞きしました。その後、TikTok LIVE(ティックトックライブ。ByteDance運営)での活動を始めます。

Pocochaはいまも並行してやっていますが、ライバー以前に「自分はもともと何をやりたかったんだっけ?」ということに立ち返ってみたんですね。そのときに「エンタメで人に何かを届けることや、楽しいコンテンツを作ることがやりたかった」のを思い出したんです。

中学生のころから芸能活動をしていたんですが、なかなか芽が出ず、最後の舞台だと思って飛び込んだのがPocochaだった。そこでなんとか成功して、そこでの生活だけ考えてもよかったんですけど、この資金を使って本来やりたかったエンタメをもっと極めたい、と思ったんです。

私、小さいころからディズニーの映画とかアニメが大好きで、親が離婚したり学校で嫌なことがあったりしたときには、エンタメの楽しい世界に逃げ込んでいました。エンタメって、その中にいるときは現実を忘れさせてくれるのが基本だと思うんですよね。

それで、私が本来やりたかったのってこれだと思い出して、TikTok LIVEではエンタメを一から作ってしっかり始めました。Pocochaは対話型なので閉鎖的になりがちだけど、TikTok LIVEは拡散型のSNSなので日本を超えて世界にも発信できるかもしれないと。

――それで「ドール配信」という、新たなコンテンツにたどりついたんですね。

Pocochaのときは、職業として成り立たせることとリスナーさんに無理をさせないことを意識して「お金に余裕のある年上の男性」というターゲットから考えていたんですが、今度は自分の特徴、「自分が得意なこと」「自分が好きなもの」「自分は何を届けたいか」の3つをすごく考えました。

そして、自分がエンタメに救われたころと同じくらいの10代とか20代の女性向けに、自分が好きな世界観を届けたいと思って、私が可愛い服で着飾って人形に扮して演技をする「ドール配信」というアイデアにいきつきました。

個々の配信がすべてつながっていたと最後に分かる仕掛け

桜川シュウさんが着飾って人形に扮する「ドール配信」

桜川シュウさんが着飾って人形に扮する「ドール配信」

――「ドール配信」というのは画期的な発明ですよね。動画配信は常に動いたり喋ったりするのが普通なのに、シュウさんは人形の格好をして動きを抑制する。

ヒントはあったんです。「無言」というカテゴリーは以前からあって、視聴者のコメントにパントマイムでリアクションする方がいました。私はPocochaでかなり喋ったり歌ったりしていたので、これ以上ノドを使わない方がいいと思っていたこともあり、これはいい方法だなと。

それに「無言」だと、世界中の人たちに言語を超えて届けられるんじゃないかなと。もともとチャップリンとかの無声映画が大好きで、セリフなしで見ている人に動きだけで何かを伝えるって最高の演技力だと思っていたんですよね。

それで、私が着飾ってポーズを取る動画に、短い言葉を挟んだものを配信して、毎日続けて見ていくと何かストーリーや世界観が伝わるものにしたらどうだろう、と考えました。

――Pocochaを始めたのは2020年1月、TikTok LIVEは2年半後くらいですかね。

TikTok LIVEの配信を始めたのは2022年5月の終わりからですが、こんなのがやりたいというコンテンツはその半年くらい前から作り始めていました。

配信を始めて半年ちょっとでフォロー数が20万を超え、TikTok LIVEの同接(配信時に同時接続している視聴者の数)も最大で1万近く、1時間配信するとのべ20万人以上の方が見てくださるようになりました。

――毎日見ているコアのファンだと、伏線が回収されたりするのも楽しめるわけですね。

最初は一体一体のドールごとに物語を書いていって、いっぱいドールたちが出て来るんですが、初代のドールだけが出てこない。で、最後の結末はまだ言えないんですけど、ドールたちと初代がつながって、どんでん返しが来る物語になっています。

ライブ配信って、どうしても今日一本で終わりだと思われがちなんですが、私はRPGのように長く長く続けて見ていくと、物語の先の想像を膨らませることができたり、個々の配信が実はすべてつながっていたのが分かったりする、というスタイルに挑戦して作っている最中なんです。

キャバクラにするのか、エンタメにするのかは配信者次第

――たくさんのライバーが現れたり消えたりする中で、シュウさんはもう3年あまり続けてらっしゃるわけですが、続けるコツがあるんでしょうか。

私のコツというより、やめる人が多いのは、まずはライバーを取り巻く環境がまだまだ整備されていないことが大きいですよね。報酬の相場もできてきたばかりで、会社さんも運営さんもなかなか長期で続けられるシステム化ができていないのが現状だと思います。

それから、周囲の方が思うよりもライバーは重労働なんですよ。トップライバーは配信時間の長い方が多くて、1日10時間とか12時間とかずっと配信をし続けて、それも毎日ですよ。コンテンツを考えるのも大変ですし、休むと人が離れるから休めないといって、だんだん身体を壊して心を病んでやめていかれる方がまだまだたくさんいます。

あと、上位になって収入が増えたときに生活レベルを上げすぎてしまって、順位が下がったときにお金が回らなくなってやめてしまう方もいます。本当はそういった資金を貯めて、次の事業に回していけるといいのになと思いますし、私も配信会社に頼まれてライバー向けの講師をするときには注意を呼びかけています。

――続けられない方も少なくない中で、シュウさんはターゲットを定めたり、内容を濃くして時間を短くしていったり、といった工夫をしているわけですね。

そうですね。いまだに「ライバーってキャバクラとどう違うの?」とかよく言われますし、そういうイメージが強いようですけど、ライブ配信はあくまで自分の枠を一SNSとして拡散するものなので、そこをキャバクラにするのか、テレビにするのか、ラジオにするのかは自分次第、それぞれのクリエイター次第です。

私は、キャバクラ的な場や疑似恋愛を楽しませる場ではなく、自分の持っているコンテンツ、例えば演技とか歌とかそういうものを発信していきたいと思っていて。そこは人それぞれ、コンテンツによりけりかなと思います。

どんなライバーでもライブコマースができるわけではない

TikTok LIVEのALL STARSが集まるイベントでは「ドール配信」の服装で登場

TikTok LIVEのALL STARSが集まるイベントでは「ドール配信」の服装で登場

――いまライバーに注目が集まっている理由のひとつが「ライブコマース」ですよね。ライバーさんにモノを売ってもらうECの形です。これについてはどう思いますか。

現状、ライバーがどうやって活動を維持できているかというと、「ファン」と「ストーリー」があるからです。ファンのみなさんの視聴者数や投げ銭があって報酬につながっているし、継続的に見ていただくためには何らかのストーリーや世界観が必要です。

日本でも過去にライブコマースをやろうとした会社があったそうですが、そのときはファンもストーリーもなく、ただモノを売ろうとしていたのではないでしょうか。モノだけならアマゾンで何でも買えるわけで、ライバーがやる必要がないんじゃないの?と思います。

いまでも動画サービスのTikTokやライブ配信のTikTok LIVEで、How Toを含めてBefore/Afterを見せたら、瞬間的にプチコスメがたくさん売れました、という例はあるんです。でも、それを一発屋ではなく継続的にやろうと思えば、ちゃんとしたターゲティングやカテゴライズをする必要があるでしょうね。

――やはりライバーは、ファンすなわちターゲットと、ストーリーや世界観が命であると。

ライブコマースを成り立たせようとすれば、SNSの発信の仕方から直していかなきゃいけないでしょうね。例えば私の場合、Pocochaでやっているスタイルではモノを売ることはできないけど、TikTok LIVEの「ドール配信」ならいけるかもしれません。

クリアなイメージで、綺麗な幻想的な世界で、見ていて「なんか美しいな」「これ可愛い、あれ可愛い」って思える世界観。この子がつけているものが可愛いと思える世界観があって、そこに「これを使ってるから、私の世界はきれいなんです」って言えれば、「これ、欲しいな」って思ってもらうこともできるのではないでしょうか。

――シュウさんとしては、これからどんな活動をしていこうと考えていますか。

まずはエンタメライバーとして、人の心を癒やせる配信や世界観をもっと広めたいというのが一番ですね。これからもライバーの象徴となるような存在を目指して頑張っていきたいと思います。あわせて、ライバー向け講師やコンサルティングみたいな形で、ライブ配信業界に色んな形で関わっていければいいなと思います。

中国ではYouTuberに代わって、ライバーが「なりたい職業ランキング」に入っているという話も聞きます。日本でも職業ライバーになりたい若い子も増えているようなので、これからライバーの認知度が上がってくる中で、私自身もそこを加速させることに貢献したいなと考えているところです。

@tiktok_live_japan 第1期LIVE Proに認定された桜川シュウさんにインタビュー‼︎動画最後には衝撃の画面が⁈ @SHU 🌸💄DOLL LIVE 桜川シュウドール配信者 #LIVEPro ♬ オリジナル楽曲 – TikTok LIVE Japan

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