「この会社で良かったのか…」「大学の友だちのほうが給料高い」 若手社員の不安、どう解消する?
「この会社で良かったのだろうか…」
「最近仕事が楽しくない…」
「転職サイトに登録しようかと思っている…」
「学生時代の仲間の方が、給料が高い…」
「何を目指せばいいのか分からない…」
私が実施しているキャリア研修では、若手社員の皆様からこうした不安や悩みの声が出ることがあります。皆さんの部下は、明確な目標に向かってモチベーション高く職業人生を歩めていますでしょうか? 今回は次世代を担う若手社員の皆様に育んでいただきたい“キャリアオーナーシップ”について、ご紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
人生100年時代に求められる、“キャリアオーナーシップ”
人生100年時代と言われ、多くの人がこれまで以上に長く働くようになっています。さらに政府も2021年に改正された高年齢者雇用安定法で、企業に70歳までの就業機会の確保を努力義務として求めています。
少子高齢化が進む現在の日本では、多くの人に長く働いてもらい、経済を回していく必要があるのでしょう。そうなると個人のキャリアは50年を超えていきます。企業の平均寿命が30年前後といわれる中、個人のキャリア寿命が企業の寿命を超えていく時代がやってくるのです。
個人のキャリア寿命が企業の寿命を超えてくるとなると、働く個人としては自身のキャリアを企業に丸投げしている場合ではありません。自分自身でキャリアを描き、それを実現していく“キャリアオーナーシップ”が求められます。
しかし、VUCAと言われる先の見えない時代、多くの人は将来に不安を抱いてモチベーションを見失い、今後のキャリアを考えられていないのが現実です。
モチベーションを高める、“キャリアオーナーシップ”の持たせ方
部下に“キャリアオーナーシップ”を高めるためには、自律的に仕事をさせていく必要があります。言われたことだけをやるのではなく、自らが仕事における課題や違和感に工夫を凝らして克服し、成果を上げていく、という姿勢が重要になります。
そこで部下とは、日頃のコミュニケーションや1ON1面談の機会を活用し、部下が目の前の仕事を自分自身でやり遂げていくことを支援していきます。具体的な流れとしては、目的と目標を明確にした上で仕事を任せ、手を出さずにやり遂げるよう応援し、仕事の結果を振り返らせるようにします。
特に振り返りに関わることが部下の成長にとって重要です。教育理論家のデービッド・コルブが唱えた経験学習モデルでは、人は、次に示すような流れで成長していくというものです。
(1)具体的経験:仕事の中で様々な成功体験や失敗経験をする。 (2)リフレクション:どのような要因が成功ポイントだったのか、なぜ失敗につながったのかを内省をする。 (3)概念化:仕事を成功に導いていくための法則や教訓を見つける。 (4)能動的実践:見つけた法則や教訓を次の仕事に活かす。
概念化の数が多ければ多いほど、部下としては自身で仕事を乗り越えた実感を持つことができ、成長実感を高めていきます。その結果、部下のモチベーションが高まり、より一層自律的に仕事を進められるようになるのです。
そして、自律的に仕事ができるようになった部下は、成果も出しますし将来のキャリアを自身で描くことができるようになっていきます。こうして“キャリアオーナーシップ”が育まれていくのです。
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【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。