明治のDX:AIによる需要予測で食品廃棄削減 デジタル推進本部を設け「専門人財」の育成も推進 | NEXT DX LEADER

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明治のDX:AIによる需要予測で食品廃棄削減 デジタル推進本部を設け「専門人財」の育成も推進

明治ほほえみ | 「100周年ブランドムービー」60秒 より

1906年設立の旧明治製糖を共通の起源とする明治製菓と明治乳業が、2009年に共同持株会社の明治ホールディングスを設立。2011年に食品事業会社の明治と薬品事業会社のMeiji Seika ファルマを傘下に置くグループ体制に移行しました。

明治は明治ホールディングス傘下の食品事業会社で、明治グループの中核事業会社です。明治グループの2023年3月期の売上高1兆621億円の81%、営業利益754億円の72%を、明治を中心とする食品セグメントがあげています。

グループスローガンを「健康にアイデアを」に刷新

明治の主要製品は国内市場シェアでトップクラスを占めており、ヨーグルトや牛乳、チョコレート、プロテイン(粉末・顆粒)、乳幼児ミルクは国内市場1位、チーズは同3位、アイスクリームは同7位です。

明治グループの連結売上高は、2016年3月期から1.2兆円台で推移してきましたが、2021年3月期にこれを割り込み、2020中期経営計画は未達に。2022年3月期には収益認識基準適用の影響もあって、さらに1兆103億円まで減少しました。

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

2023年3月期は売上高がやや持ち直したものの、原材料価格の高騰や急激な円安の進行などもあり、営業利益率は7.1%と前期比で2.1ポイント悪化しています。

明治グループは2021年3月、目指すべき企業グループ像として「2026ビジョン」を策定。「こころとからだの健康に貢献」など3つのビジョン実現に向けて「食品事業の成長力強化」など4つの重点方針を示しました。同年6月には、グループスローガンを「健康にアイデアを」へと刷新しています。

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

2022年5月には、ビジョン実現への第2ステージとして「2023中期経営計画」を策定。利益成長(ROE11%以上)とサステナビリティ活動を同時に実現する「明治ROESG経営の実践」をコンセプトに、「コア事業の回復と成長基盤の確立」「海外市場での成長基盤の確立」など4つの重点施策を掲げています。

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

「明治の“栄養”は、提供する商品や情報、サービスの全て」

明治は2023年9月に、企業サイトにて「2023中期経営計画を支えるDX戦略」を公表しました。この中で、グループスローガンの「健康にアイデアを」をブレイクダウンした「栄養ステートメント」として、「明治の“栄養”は、提供する商品や情報、サービスの全て」と定義しています。

食品セグメントとして、「コア事業の回復」「海外展開の推進」の2つを重点課題に設定。特にコア事業については、ヨーグルトやチョコレート、栄養食品に注力するとともに、新規事業の育成で事業ポートフォリオを強化。ITや外部リソースの活用により、スピードを意識した経営スタイルへの変革・業務プロセスの刷新をするとしています。

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

2023中期経営計画説明会資料(2021年5月18日)より

「2023中期経営計画を支えるDXの具体的な取り組み」では、2つの取組みを推進。1つ目の「新事業創造・既存事業変革」では、3つの取組みをあげています。

「市乳部門の特売におけるAI需要予測」では、鮮度を命とする商品群において、販売予測値のAI予測モデルの実用化と販促情報システムへの組み込みを行い、製品廃棄や鮮度外在庫の削減、営業や工場需要担当者の作業生産性の向上を実現。さらには、鮮度外在庫の処分販売対応に伴う対応工数および拡売費の削減、ブランド価値棄損防止の効果を図っています。

『ほほえみクラブ』のオンライン相談」では、運営する育児応援サイトにおいて、従来の電話相談に加え2022年6月にLINEによるオンラインビデオ通話での相談サービスを新たに開始。デジタルを活用した顧客接点の多様化を進めています。

「アイスクリーム新商品のAI需要予測」では、販売実績や気象情報を活用した新商品の需要予測AIの実証実験を開始。需要予測業務の効率化と販売予測精度向上による安定した収益の確保を図っています。

情報システム部に加え「デジタル推進本部」を発足しDX推進

DXの具体的な取り組みの2つ目の「業務効率化・コスト削減」では、3つの取組みをあげています。

「経理業務プロセス改革」では、立替精算のみならず、請求書の受領、会計システム入力、電子保管などの経理業務の全領域をデジタル・ペーパーレス化した会計システムを導入し、運用を開始しているとのことです。

「顧客応対業務の高度化」では、お客様相談センターへの問い合わせ内容をAI音声認識によりテキスト化・要約することで、オペレーターの応対を支援し、顧客満足度向上を目指しています。

「Web会議システム導入による社内会議のオンライン化」では、対象の従業員にWeb会議システムを導入し、出社率の削減を目指すとのことです。

また、DXの推進体制として、IT関連業務を従来担ってきた情報システム部に加え、2022年4月に「デジタル推進本部」を発足。体制強化によりDXの実現に向けてスピードアップを図るとしています。

DXを実現できる人財の育成にも取り組み、全従業員が身につけるべき土台となる要素を「Meiji Digital Mind (MDM)」と定義。事業についてのビジネススキルと、データ分析やAIについてのテクノロジースキルの両方を兼ね備えた「MDM人財」の育成プログラムを開始するとしています。

YouTube:明治ほほえみ | 「100周年ブランドムービー」60秒

考察記事執筆:NDX編集部

明治ほほえみ | 「100周年ブランドムービー」60秒の再生回数推移

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