FDKは1950年、乾電池の製造・販売を目的に東京電気化学工業として発足。1953年に古河グループ入りして1958年に富士電機化学工業となり、1972年に富士通の連結子会社となって2001年にFDKに社名変更しています。製造子会社を中国と台湾に、販売子会社を米国やドイツ、シンガポールなどに置いています。
現在は、FUJITSUブランドの乾電池をはじめとするアルカリ電池やニッケル水素電池、リチウム電池やマンガン乾電池、蓄電池などの「電池事業」と、スイッチング電源やトナーなどの「電子事業」の2つのセグメントで事業を展開。2023年3月期の売上高の67.2%を電池事業が占めています。(NEXT DX LEADER編集部)
デジタル技術でものづくり・営業・間接業務を再設計
FDKは2020年4月、2029年度のあるべき姿としてグループ戦略Framework「10年の計」を策定。「Smart Energy Partner」というビジョンを掲げました。
この実現に向け、最初の3年間(2020~2022年度)の中期事業計画「R1」を展開。連結売上高はアルカリ乾電池の製造子会社売却にもかかわらず目標値を上回り627.5億円を達成したものの、営業利益率は当初計画5.1%に対して1.2%と未達に終わりました。
2023年4月には、第2次中期事業計画(2023~2025年度)の「R2」を策定。R1の計画期間より厳しい経営環境下になることを踏まえ、「主力ビジネスの利益ある成長の加速」「新規ビジネスの始動と開拓」「認め合い・高め合う文化の醸成」を3本柱としています。
そして、デジタル技術をベースに「ものづくり」「間接業務」「お客さま連携」を再設計し、企業価値向上、環境経営、企業文化・風土の変革を目指す「全社DXプロジェクト」をキックオフ。経営と現場が一体となり、デジタルを最大限に活用した変革を推進するとしています。
具体的なアクションとしては、「ものづくり」はデータドリブンへの対応、「お客さま連携」はデジタルサプライチェーンの構築、「間接業務」はITツールを基軸に業務全般を再設計、「人材育成」は経営層~全社のITリテラシー向上を進めつつ、「IT環境の整備とサーバーセキュリティ対策の強化」を図るとしています。
「R2」の数値イメージは、計画期間3カ年累計の連結売上高を2,000億円(「R1」累計1,857億円)、営業利益を50億円(同45億円)、ROICを5%(同4.3%)、営業CF(キャッシュフロー)を130億円(同69億円)まで伸ばすことを目指しています。
2025年度の売上高目標を680億円、うち新領域事業で約15%上げ、営業利益率を4.1%にまで改善。生み出した営業CFを「既存ビジネスの強化」に90億円、「新電池・DX等成長に向けた投資」に20億円、「財務基盤強化」に20億円を投資するとしています。
DX戦略の柱は「ものづくり」「共創ビジネスモデル」「業務変革」
FDKは2023年3月、「「進化に挑戦する」全社 DX プロジェクトについて ―ものづくり DX 企業への変革―」を発表しました。
代表取締役社長の長野良氏をCDXO(最高DX責任者)とし、国内10部門と国内外関係会社から部門責任者を選出。生産技術や製造部門、営業、社内IT、コーポレート等の多様な人材からなる「DX推進室」を新設しています。
DXの進め方としては、「「経営」と「現場」が一体となり、デジタルを最大限に活用したトランスフォーメーションを目指す」とし、「経営の積極的関与」「各部門の知識を結集」「業務/ビジネスモデル変革に注力」を図るとしています。
DX戦略は3つの柱を立てています。1つ目の「ものづくり」では、「カメラ・AI/データ収集」「AI学習/生産品質向上」「電力データ化/カーボンフットプリント対応」「ロボティクス化/小ロット対応」「Smart Factory」の5つのSTEPを設定しています。
2つ目の「共創ビジネスモデル」では、「デジタル技術を活用した製品開発のスピードUP」「ものづくりDXによる量産品質向上とスピードUP」「開発からものづくり、出荷までのデータをつなぐデジタルサプライチェーン」「当社ものづくりデータを活用したお客様とのビジネスモデルの共想」という4つのテーマで、お客様へ新しい価値を提供するとしています。
3つ目の「業務変革」では、RPAやAI、Pythonなどを活用したITツールを基軸に、各業務を再設計。営業部門では「価値提案と早いアクション」、購買部門では「効率的原材料確保」、経理部門では「経営状態の把握スピード化」、総務部門では「社内申請業務の省人化」、人事部門では「適性に合わせた教育と評価」というテーマを掲げています。
3年間で約5億円の投資により「IT環境整備」
このほか「FDK全社DXプロジェクト」では、「IT人材の育成・採用」「IT環境整備」「サイバーセキュリティ」の3つの取組みを推進し、業績ならびに経産省の「DX推進指標」によりDXの進捗状況を確認するとしています。
IT人材の育成・採用では、「人事制度の刷新」を行い、コンピテンシー評価を取り入れて若手のやる気向上を図るとともに、ベテラン社員も活躍できる制度へ移行。また「DXを人材育成」のため、DX向け教材の提供やオンライン教育の拡充を行い、IT人材の獲得に向けた採用とベンダーの活用を推進しています。
なお、コンピテンシー評価とは、業務に関する知識や技能ではなく、仕事で高いパフォーマンスを発揮している人の行動特性を評価基準とし、成果や行動につながる「動機」や「価値観」を評価する仕組みです。
IT環境整備では、「基幹システム・ハード等の刷新」と「業務の効率化に向けたITシステムの積極活用」に取り組み、3年間で約5億円の投資を計画しています。後者については、Microsoft Office365の活用によるテレワークの業務高質化や、AIやRPA活用による業務改善を図るとしています。