コマツのDX:建設現場をデジタル化しリアルな施工へフィードバック 安全で生産性の高い「未来の現場」目指す | NEXT DX LEADER

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コマツのDX:建設現場をデジタル化しリアルな施工へフィードバック 安全で生産性の高い「未来の現場」目指す

コマツの月面建設機械プロジェクト より

小松製作所(コマツ)は1921年、現在の石川県小松市で銅山経営をしていた竹内鉱業の機械修理部門が分離独立して発足しました。1931年に国産初の農耕用トラクターを完成、1943年には国産ブルドーザーの原型を製作しています。戦後は早くから海外展開を始め、2023年3月期の海外売上比率は88.4%。建設機械のシェアは国内トップで、世界的にも米キャタピラーに次ぐ2位のシェアを誇っています。

一時は半導体やバイオ、FA機器など多角化を図りましたが、2000年代初頭から事業の選択と集中に取り組み、現在は、建設・鉱山機械やフォークリフトなどの「建設機械・車両事業」を中心に、リース・割賦の「リテールファイナンス事業」、大型プレス機械や板金機械などの「産業機械他事業」の3つに経営資源を集中しています。(NEXT DX LEADER 編集部)

お客様とともに「世界中の現場をデジタル化」進める

2023年3月期の連結業績は、売上高が3兆5435億円、営業利益が4935億円、営業利益率が13.8%で、売上利益ともに過去最高。セグメント別売上高構成比(消去前)は、中核事業の建設機械・車両事業が92.3%、同セグメント利益でも89.9%と、ほぼすべてを占めています。

「2022年度 決算説明会」(2023年4月28日)より

「2022年度 決算説明会」(2023年4月28日)より

コマツは2022年4月、2022~2024年度中期経営計画「DANTOTSU Value – Together, to “The Next” for sustainable growth」を発表しました。

「DANTOTSU Value」とは、「ダントツ商品」(製品の高度化)、「ダントツサービス」(稼働の高度化)、「ダントツソリューション」(現場の高度化)の3つ。この追求を通じて、ESG課題解決と収益向上の好循環を生み出す顧客価値創造、および持続的な成長を実現するとしています。

「中期経営計画(2022~2024年度)」(2022年4月28日)より

「中期経営計画(2022~2024年度)」(2022年4月28日)より

また、「安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場」をお客さまとともに実現するために「世界中の現場をデジタル化」することを目指し、現場の地形、人、機械、材料がつながったオープンプラットフォームで、パートナーとともに、先進のテクノロジーを活用し、現場の課題を解決し、最適化するとしています。

中計期間中の成長投資分野は、技術強化分野として「コンポーネント」「システム/ソフトウェア」「自動化、自律化、電動化、遠隔操作化」など。成長事業分野として「ソリューションビジネス」「バリューチェーンビジネス」「林業機械」「坑内掘りハードロック事業」などをあげています。

新会社で「DXスマートコントラクション」を推進

中期経営計画では成長戦略の3本柱として「イノベーションによる成長の加速」「稼ぐ力の最大化」「レジリエントな企業体質の構築」をあげ、3本柱の共通テーマに「パートナーシップの拡大」とともに「あらゆる分野でのDX推進」を掲げています。

成長戦略における主な重点活動でDXと直接的な関わりが強いのは「DXスマートコントラクションの推進、海外展開」です。

「中期経営計画(2022~2024年度)」(2022年4月28日)より

「中期経営計画(2022~2024年度)」(2022年4月28日)より

コマツは、2015年からスマートコントラクションの取り組みを行っており、これまで2万超の国内現場に導入されてきました。これを「DXスマートコンストラクション」に進化させ、建設現場が抱える労働力不足や長時間労働、安全性・環境適合性、さらにはコストといった課題を解決するとしています。

2021年にはコマツが50%超を出資し、建設現場のあらゆるデータを可視化するデバイスやアプリケーションを開発する株式会社EARTHBRAINをNTTドコモなど3社と共同で設立。同社が開発するアプリケーションとコマツのICT建機を組み合わせ、DXスマートコントラクションの導入現場をグローバルに拡大し、国内外の建設現場の生産性の更なる向上を目指します。

EARTHBRAINは「デジタル技術を駆使し、土木現場の生産性・安全性・環境性の世界革命を起こす」をミッションに設定。地形や機材、作業員や材料といった現実世界での建設現場の情報をデジタル化し、サイバー空間で最適な施工計画を立案し、リアルな施工へフィードバックすることで革新的な建設現場を創造するとしています。

「2022年度 決算説明会」(2023年4月28日)より

「2022年度 決算説明会」(2023年4月28日)より

EARTHBRAINの製品・サービス群は「可視化(レベル1 )」「課題発見・分析(レベル2)」「最適化・デジタルタスク化(レベル3)」の3層で構成されており、例えばレベル1の製品のひとつ「Smart Construction Edge 2」を使うことで、ドローンを用いて現況地形の測量や3D地形データ化を行う現場のデジタルツインを作ることができます。

DXスマートコントラクションに関する中期経営計画のKPIは、いずれも単年度で「ICT建機 海外販売台数 2,700台」「導入現場数(世界計)13,000現場」「施工の高度化・最適化レベル3(施工計画の3D化)以上の現場比率15%」という指標を設定しています。

「Komtrax」で建設機械の状態を遠隔で確認

コマツは「DANTOTSU Value」「ダントツ商品」の中で、製品の高度化の具体的な方向性を「自動化、自律化、電動化、遠隔操作化」と示しています。

コマツは、建設機械の情報を遠隔で確認するための独自のIoTアプリケーション「Komtrax」(コムトラックス、Komatsu Machine Tracking System)を開発。2001年より標準装備を進め、現在では世界68万台以上の車両に搭載されています。

車両システムにGPSや通信システムを組み込み、鉱山向け大型機械にはオンタイムで情報が把握できるKomtrax Plusを搭載。油圧ショベル向けにはシステムを後付けできるスマートコンストラクション・レトロフィットキットを提供しています。

Komtrax Plusの概要(コマツカスタマーサポートのウェブサイトより)

Komtrax Plusの概要(コマツカスタマーサポートのウェブサイトより)

Komtraxを使うことで、世界中の現場の機械・車両の所在地情報や稼働状況、エンジンロックなどを、離れたオフィスで管理できます。このデータを活用し、部品の適切な交換時期やオーバーホールのタイミングを顧客に提供していくことも可能に。リテールファイナンス事業における延滞債権発生の予防やスピーディな審査などにも活用されています。

またKomtraxは、産業機械事業でも「産機Komtrax」として展開しており、プレス機械や板金機械、レーザ加工機などの産業機械に標準搭載しています。

世界中の機械の稼働状況を、作業中の品番名や作業者を含めてオンタイムで把握でき、生産実績の自動記録・集計などが可能に。データを基にした作業時間のムダや管理工数の削減、金型やプレス機の故障の予防や製品不具合の早期発見が可能になります。

無人ダンプ運行やブルドーザーの遠隔操作化も

コマツは鉱山現場における安全性・生産性の向上を目指し、2008年に世界初の「無人ダンプトラック運行システム(AHS)」を市場導入しました。2022年6月末現在、541台のダンプトラックがこのシステムによって稼働しています。

「コマツレポート2022」の中で、代表取締役兼専務執行役員でマイニング事業本部長を務める森山雅之氏は、新しい中期経営計画において、AHSの高度化に加えて、ドリル・油圧ショベル・ブルドーザーなどの遠隔操作化・自動化、鉱山用オープンテクノロジープラットフォームを開発・市場導入を進めることで、「鉱山現場のDX化(Mine Wide Optimization)」を目指すとしています。

また、従来の露天掘りから「坑内掘り」へのシフトを見据え、坑内掘りハードロック向け鉱山機械の商品レンジ・ビジネス拡大にも取り組むとしています。

「マイニングにおける施工の安全性と生産性の追求」(2021年4月6日)より

「マイニングにおける施工の安全性と生産性の追求」(2021年4月6日)より

このようなDXの取り組みが評価され、コマツは経済産業省などが選定する「DXプラチナ企業2023-2025」に選定されています。これは3年連続で東証上場企業から選ばれる「DX銘柄」に選定されていること、過去にDXグランプリに選定されていることが選定の条件で、コマツは中外製薬、トラスコ中山とともに選定されています。

「DX銘柄」の評価項目には組織づくり・人材・企業文化も含まれますが、コマツは中期経営計画のESGへの取り組みの中で「個人の能力開発と事業成長の実現(DX・AI人材教育)」を挙げています。

2022年度に開始された「DX人材教育」では、基礎知識習得をねらいとした入門教育と、業務やプロジェクトでの実践による課題解決を目指した実践教育の2つのカリキュラムを設け、社員のリスキリングを推進しています。


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YouTube:コマツの月面建設機械プロジェクト

考察記事執筆:NDX編集部

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