デンソーのDX:交通事故のない安全な社会を目指し「センシング」と「AI」で自動運転技術の発展に貢献 | NEXT DX LEADER

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デンソーのDX:交通事故のない安全な社会を目指し「センシング」と「AI」で自動運転技術の発展に貢献

デンソー ブランドパーパス より

デンソーは1949年、トヨタ自動車工業(当時)から電装品(各種電気・電子機器)部門が分離独立し、日本電装として設立されました。1953年に独ロバート・ボッシュ社と技術導入契約を締結し、1961年に品質管理の最高権威であるデミング賞を受賞。1970年代から積極的な海外展開を行い、現在は35の国と地域に拠点を置き、自動車部品の売上規模は世界第2位、海外比率は53%に達しています。

1980年代から安全システム製品を実用化し、FA事業につながるRFIDやQRコードを開発。1996年に現在の商号に変更。2017年に富士通テン(当時)を買収、2020年にトヨタ自動車より主要な電子部品事業を譲り受けて広瀬製作所として始動しています。(文責:NEXT DX LEADER編集部)

注力分野に「電動化」「先進安全」「コネクティッド」「FA」を選定

デンソーの業績は、コロナ禍で一時落ち込んだものの右肩上がりに伸長しています。2023年3月期の連結売上収益(IFRS)は6兆4013億円、営業利益は4261億円、当期利益3146億円の増収増益で、いずれも過去最高を更新しています。

2023年3月期第2四半期決算説明会(2023年10月31日)より

2023年3月期第2四半期決算説明会(2023年10月31日)より

2023年3月期の売上収益(グループ会社間の内部取引控除後)構成比は、トヨタグループ向けの部品供給事業が49.3%、その他メーカー向け部品供給事業(OEM)が39.4%、市販・非車載事業が11.3%でした。

デンソーは2017年10月、「環境」「安心」「共感」の3つをキーワードとした「2030年長期方針」とともに、電動化・自動運転の実現に伴うモビリティの新領域での成長で売上収益7兆円・営業利益率10%を目指す「2025年長期構想」を発表しました。

デンソーウェブサイト「デンソーグループ2030年長期方針、2025年長期構想を策定」より(2017年10月31日)

デンソーウェブサイト「デンソーグループ2030年長期方針、2025年長期構想を策定」より(2017年10月31日)

事業面での具体的施策としては、注力4分野として「電動化」「先進安全/自動運転」「コネクティッド」「非車載事業(FA/農業)」を選定。コア事業に以下の7つを掲げています。

・インバータなどの「エレクトリフィケーションシステム」
・ガソリン直噴インジェクタなどの「パワトレインシステム」
・カーエアコンなどの「サーマルシステム」
・ハイブリッドECUなどの「モビリティシステム」
・半導体式センサなどの「センシング&セミコンダクタ」
・垂直多関節ロボットなどの「インダストリアルソリューション」
・施設園芸関連製品などの「フードバリューチェーン」

「DENSO Integrated Report 2022」より

「DENSO Integrated Report 2022」より

これらは、すべてデジタル技術を活用した価値創造であり、言葉は使っていないものの「DX」の取り組みといえます。

デンソーは2030年長期方針に加え、2021年度までのアクションプランとして「中期戦略」を策定。「経営基盤の変革」として「やる気に満ちたヒトづくりと先端ITの活用により、個の力を引き出し、スピードと現場の活力を最大化する」という方針を打ち出しています。

さらに、デンソー変革プラン「Reborn21」では、戦略を実現する「仕事の進め方」として「コア&カスタマイズ戦略(上流開発強化)」とともに「デジタル化」をあげ、「蓄積されたデータ・スキルを活用し、仕事のプロセスを再構築する」としています。

有馬社長「先進安全機能を保有車にも搭載」

DXの取り組みにおいて、「2030年長期方針」「2025年長期構想」から一気通貫でつながっているキーワードのひとつは「安心」です。

デンソーは1980年代から、ABSやエアバッグセンシングシステム、前方追突警報などさまざまな安全システム製品を実用化してきましたが、2030年長期方針のキーワードのひとつ「安心」を目指す姿として、「交通事故のない安全な社会と快適で自由な移動を実現し、すべての人が安心して暮らせる社会づくりに貢献する」としています。

代表取締役社長の有馬浩二氏は「統合報告書2021」(2021年3月期)で、自動運転技術や先進安全機能を開発して「新車に搭載していく」ことはもちろん、「世界に14億台以上あるといわれている保有車の安全性向上に取り組むことが、交通事故ゼロにつながるプラクティカルな選択肢」という考えを述べています。

注力4分野の「先進安全/自動運転」でも、これまで培ってきたセンシング技術に加え、AI・情報技術に磨きをかけることで、自動運転技術の発展に貢献していくとしています。この領域に特に関わりの強い事業は「モビリティシステム」「センシング&セミコンダクタ」の2つです。

モビリティシステム事業では、コックピット製品やコネクティッド製品、AD(自動運転)&ADAS(先進運転支援システム)製品、ECU(電子制御装置)などエレクトロニクス製品の開発・製造のほか、ペダル踏み間違い加速抑制装置などの後付け製品の企画・開発を行っています。

事業部の名称をモビリティエレクトロニクスから、2021年1月に「モビリティシステム事業グループ」に変更。同時に、コネクティッド領域の事業成長と収益向上を加速させるため、「コネクティッドシステム事業推進部」を事業部化し、情報通信事業部を新設しました

2020年度は乗員に安心感を与える高度運転支援技術の実現と車両の安全性能向上に貢献する製品を開発し、2021年4月に発売されたLEXUS 新型「LS」、TOYOTA 新型「MIRAI」に搭載された高度運転支援技術「Advanced Drive」向けの製品として採用されました。

また、既販車への安全装備の期待が高まる中、「後付け踏み間違い加速抑制アシスト」が2020年度にカーメーカー5社の純正用品に新たに採用されています。

AI人財育成教育で「デンソーらしい」DX推進

2021年5月に公開した「ソフトウェア戦略」で、デンソーは「クロスドメイン価値の提供」「業界標準の基盤づくり」の両面を強化するとしています。

ソフトウェア戦略(2021年5月26日)より

ソフトウェア戦略(2021年5月26日)より

「クロスドメイン価値の提供」とは、パワトレやボデー、シャシなどの単一ドメインごとに進化を行ってきた従来のやり方を変え、「エネルギー」「自動運転」などのテーマに向けて全ドメインのソフトウェア技術と開発ノウハウを総動員した取り組みを行っていくことを指します。

「業界標準の基盤づくり」とは、単独価値の競争型を追求してきた従来のやり方を変え、標準化団体(JasPar/AUTOSAR)への参画・提案や、各OEMとの車両開発を通じた提案・共通化など、デンソーの強みである開発経験や信頼関係を活かして、業界全体のパートナーシップで「環境」「安心」の取り組みを支えるとしています。

このほかデンソーでは、社員一人ひとりがより付加価値の高い業務にシフトできるよう、全社員向けのAI人財育成教育による「デンソーらしい」DXの推進を実施しています。

社員のAIへの理解度や職種別に応じた教育コンテンツを提供し、自発的に個人・各部の業務改善から、社外のステークホルダーと連携した業務・ビジネス改革を行えるよう支援。2022年度末までにAIを業務で使いこなせる「AI活用人財」を2,000人育成することを目指します。

YouTube:デンソー ブランドパーパス

考察記事執筆:NDX編集部

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