リコーのDX:「はたらく人の創造力を支えるデジタルサービスの会社」実現への強い意思でグループ全体の変革進める | NEXT DX LEADER

NEXT DX LEADER

リコーのDX:「はたらく人の創造力を支えるデジタルサービスの会社」実現への強い意思でグループ全体の変革進める

リコー 企業紹介 コンセプト・事業紹介映像 より

リコーは1936年、財団法人理化学研究所(理研)傘下の理化学興業の感光紙部門が独立して設立された会社です。現在はオフィス向け複合機で世界トップシェアを誇り、海外売上高比率は約6割。2024年には東芝テックと事務機の開発生産部門を統合する合弁会社を設立予定で、その地位をさらに確かなものにしています。

2023年3月期の売上高は2兆1341億円。売上高の77.3%を複合機等の機器およびサービスの販売を行う「デジタルサービス」が上げ、営業利益はデジタルサービスとともに、機器の製造・OEMを行う「デジタルプロダクツ」が生み出しています。(NEXT DX LEADER編集部)

社内DXの実践を徹底し、外販レベルへの高度化を推進

リコーは2020年3月発表の「第19次中期経営計画総括と第20次中期経営計画方向性」の中で、当時の社長である山下良則氏が、創業100周年を迎える2036年に向けたビジョンとして「“はたらく”に歓びを」という長期ビジョンを示しています。

その背景には、1977年にOA(オフィスオートメーション)を提唱したころからの「機械でできることは機械に任せ、人はより創造的な仕事を」という思いがあります。

「中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

「中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

2021年3月の「中長期展望と第20次中期経営計画」では、2025年リコーの中長期目標として「はたらく場をつなぎ、はたらく人の創造力を支えるデジタルサービスの会社」というスローガンを示しています。これらの要素から、リコーが会社全体でオフィスを中心としたDXの体現化を目指していることが分かります。

「中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

「中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

あわせて社内カンパニー制が導入され、事業部は以下の5つに再編されました。

  • 「リコーデジタルサービス」(RDS):機器およびサービス販売
  • 「リコーデジタルプロダクツ」(RDP):機器製造・OEM
  • 「リコーグラフィックコミュニケーションズ」(RGS):商用印刷・産業印刷
  • 「リコーインダストリアルソリューションズ」(RIS):サーマル(感熱紙)・産業プロダクツ
  • 「リコーフューチャーズ」(RFS):SV(サーバ)、ヘルスケア、IJ電池(インクジェット印刷技術を応用したリチウムイオン二次電池)、社会インフラ、新素材、AM(3Dプリンターをキーとしたアディティブ・マニュファクチャリング)、エナジーハーベスト(環境発電)

本社は、グループ経営のガバナンスと資源配分に特化した小さくて強い本社を目指す形で役割を絞り込み、経営企画や人事、財務、ESG(環境・社会・ガバナンスの取り組み)を強化した「グローバルヘッドクォーター」のほか、次の2つの組織区分で全社的なDXの推進を行っています。

「プラットフォーム」では、“デジタルサービスの会社”としての風土や人材、仕組み、インフラ、技術を先鋭化することを目指し、デジタル戦略部門や先端技術研究所を新設しています。「プロフェッショナルサービス」では、社内DXの実践を徹底し、外販レベルに高度化することを目指します。

なお、リコーの組織図には、コーポレート執行役員の「グループ本部機能責任者」の中に、CTO(技術開発領域担当)のほか、CDIO(デジタル戦略領域担当)プロフェッショナルサービス担当(事業支援機能/プロセス改革領域)という役職があり、本社機能に対応しています。

「デジタルサービスの会社」のはたらき方の4つの姿を定義

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

2022年3月の「【進捗報告会】中長期展望と第20次中期経営計画」では、“デジタルサービスの会社”のはたらき方として、次の4つの姿が示されました。ここにリコーの社内DXの目指す姿が明確化されているといえます。

  • お客様視点に近いところでの顧客価値の創出・提供へ
  • 社員が自律的にチームワークを発揮して問題発見・課題解決
  • 能力を最大発揮するための成長の機会が与えられている
  • 垣根が取り払われ、社員がオープンに情報・データにアクセス可

そして、“デジタルサービスの会社”になるために人的資本を転換させる経営基盤強化の主な取り組みとして、以下の3つの課題が掲げられています。

1つ目の「デジタル人材の育成・獲得」は、ビジネス系の「ビジネスインテグレーター」や、IT技術系の「デジタルエキスパート」、それにビジネスアナリストやシチズンデベロッパーの「プロセスDX人材」といったデジタル人材を定義し、育成を進めています。

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

2つ目の「レガシーシステムの刷新を含むクラウド移行やデータ基盤の構築」については、「180のシステムのクラウド移行を含む約7割の基幹システムの刷新」に5年で580億円、「マスターデータ定義・整備によるデータドリブン経営」は5年で20億円の投資を行い、ともに計画どおりに進捗しています。

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

なお、「データドリブン経営」実現に向けた、以下の4施策が挙げられています。

  • グローバル共通データ基盤の構築
  • マスターデータのグローバル標準化・管理プロセス自動化
  • ROIC経営を推進する情報整備
  • 顧客情報の一元管理化、活用による売上成長貢献

3つ目の「リコー式ジョブ型人事制度導入による社員の自律化の促進」については、ジョブ型制度を2022年4月から本社で導入開始。今後は順次関連会社に展開予定です。

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

「【進捗説明会】中長期展望と第20次中期経営計画」(2021年3月3日)より

実現することは「実力や意欲に基づく、機動的な適所適材による登用」「ジョブに応じた柔軟な報酬への変化」「専門職・専門性を追求するキャリアの実現」の3つで、この取り組みを通じて、若手抜擢や女性管理職比率が増え、自立型社員がイキイキとはたらくデジタルサービスの会社に変革することを目指しています。

デジタル戦略として「変革を加速する5つの重要課題」を示す

2023年3月公開の「リコーグループ統合報告書2022」には、「中長期展望と第20次中期経営計画『リコー飛躍』」と題して、第20次中計の取り組みと成果、そして第21次中計に引き継がれる方針がまとめられています。

「リコーグループ統合報告書2022」(2022年3月31日)より

「リコーグループ統合報告書2022」(2022年3月31日)より

第20次中計の基本方針として「事業競争力の向上」「経営基盤の強化」「資本収益性の向上」の3つが示されており、経営基盤強化に向けたデジタル戦略の方向性として「変革を加速する5つの重要課題」が掲げられています。

  1. 企業風土・人材:グループ社員の意識・企業風土の変革、デジタル人材の育成・強化
  2. デジタル基盤:共創プラットフォームを実現するIT、RSI、AI/ICTの融合・共通基盤整備
  3. データ利活用:データ利活用の最大化によるカスタマーサクセスへの貢献
  4. 社内プロセス変革:デジタルを活用したワークフローの最適化、新しい仕事の仕方の定着
  5. 顧客価値創造:デジタル技術とデータを使いこなした顧客価値の創出

DXというと、デジタルツールの導入によるシステム刷新や業務効率化がイメージされやすい中、リコーでは企業風土・人材や顧客価値創造まで広い視野で取り組みを行っています。

なお、経産省ほか選定の「DX銘柄2022」では、「自社トナー工場へのAI導入による、省力化、高品質化、従業員満足度向上の実現」(省力化(労働生産性2倍)と高品質化(不良品発生率65%~91%低減)により、総生産量5%Upを実現ほか)や「360度画像、クラウド、AIを利活用し、新たな顧客価値を創出」といった取り組みが評価されています。

グループ経営の進化に向けて「RSIエコシステム」を構築

2023年4月に大山晃社長体制に変わり、「第21次中期経営戦略」が始まりました。前体制の取り組みを継承しつつ、「デジタルサービスの会社」への変革を成し遂げるとし、提供価値を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES 人々の“はたらく”をよりスマートに」、価値の届け方を「デジタルサービスの会社」と規定しています。

また、デジタルサービス売上の比率を2022年度の40%(オフィスのデジタルサービス33%+現場のデジタルサービス7%)から2025年度には60%超(オフィス50%+現場13%)に高めることを目指しています。

目標達成に向けて「地域戦略の強化とグループ経営の進化」「現場・社会の領域における収益の柱を構築」「グローバル人材の活躍」という3つの基本方針を掲げ、具体的な施策の中でさまざまなDXに取り組んでいます。

特に「グループ経営の進化」については、デジタルサービスやインフラが連携して、顧客提供価値を拡大する「RSIエコシステム」の構築・運用に取り組んでいます。

「第21次中期経営戦略」(2023年3月7日)より

「第21次中期経営戦略」(2023年3月7日)より

RSIとは「RICOH Smart Integration」の略。「リコー統合報告書2022」の中で、RSIは「リアルの顧客接点を融合した価値創造を実現するためのプラットフォーム」と説明されています。

CDIOの田中豊人氏は同報告書の中で、これまでのRSIは「紙から電子データへ」の変換機能を提供し「手作業の自動化・省力化」を促進してきたが、今後は「オフィスから現場・社会に提供価値を拡大し、パートナーやお客様との共創活動の活性化にも取り組んでいきます」とコメントしており、高度化した自社DXの取り組みを、顧客のオフィスにとどまらない領域にも提供していこうと考えているようです。

メールマガジン「NEXT DX LEADER」をメールでお届けします。 DX関係の最新記事、時事ネタなどをお送りする予定です。

YouTube:リコー 企業紹介 コンセプト・事業紹介映像

考察記事執筆:NDX編集部

リコー 企業紹介 コンセプト・事業紹介映像の再生回数推移

記事カテゴリー

  • トップページ
  • 製造業のDX
  • リコーのDX:「はたらく人の創造力を支えるデジタルサービスの会社」実現への強い意思でグループ全体の変革進める