クボタのDX:独自の営農支援システム「KSAS」を展開 中期経営計画の共通テーマに「DX」掲げる | NEXT DX LEADER

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クボタのDX:独自の営農支援システム「KSAS」を展開 中期経営計画の共通テーマに「DX」掲げる 

【GROUNDBREAKERS】KSASの噂を検証せよ!それゆけ!特命局!! より

クボタは1890年、久保田鉄工所として大阪市に創業しました。1893年に水道用鉄管、1922年に農工用石油エンジンの製造を開始、1947年に耕運機を開発。戦後は1962年に上下水道などの環境整備事業へ進出し、1972年に米国、1974年にフランスに販売拠点を設けました。

創業100周年の1990年に社名をクボタに変更。現在の事業セグメントは「機械」「水・環境」「その他」の3つで、2023年12月期の売上高の86.9%を機械事業が占めており、海外売上比率は77.5%にのぼります。(NEXT DX LEADER編集部)

DXを通じた「事業展開」「業務革新」「働き方改革」に取り組む

クボタの2023年12月期の業績(IFRS)は、売上高が前期比21.9%増の2兆6788億円と過去最高となる一方で、営業利益は原材料高や物流費の高騰で同10.5%減の2189億円に。営業利益率は8.2%で、前期比で2.9ポイント悪化しています。

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

クボタは2021年2月、長期ビジョン「GMB2030」中期経営計画を策定しました。GMB とはGlobal Major Brandのことで、2030年までに「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」となることを目指しています。

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

具体的には、事業展開(What)として既存事業の拡充に加え、新たなソリューションとして「食料」「水」「環境」の3つに関わる新しい事業に取り組むとしています。

強化すべき事業基盤(How)としては、「Innovation(イノベーションを生み出す体制構築)」「Global Management(グローバル経営と人材活用)」などとともに「DX(デジタルトランスフォーメーション)」をあげています。

中期経営計画2025では、「ESG経営の推進」を中核に「利益率の向上」など5つのメインテーマをあげつつ、すべてに貢献する共通テーマとして、ここでも「DX」を掲げています。

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

具体的な推進内容は、DXを通じた「事業展開」「業務革新」「働き方改革」に取り組みつつ、DXの基盤となる「ICT技術」「ビッグデータ」「先端技術」のプラットフォームを整備・活用するとしています。

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

長期ビジョン及び中期経営計画について(2021年2月22日)

営農システムとIoTソリューションを展開

中期経営計画の「DXを通じた事業展開」であげられている「KSAS(ケーサス)の展開」とは、クボタが開発した営農支援システムKSAS(KUBOTA Smart Agri System)を指し、インターネットクラウドを利用して農業経営課題の解決をサポートするものです。

KSASの利用により、パソコンやスマホによって電子地図を用いた圃場管理や作業の記録、進捗状況の把握などを行い、農業経営の見える化が可能に。通信機器を搭載したクボタ農機と連動すると、食味や収量などの作物情報の把握、生育ムラのある圃場に対する可変施肥など、品質や収量の向上に役立てることができます。

今後は「農機自動化による省力化」「データ活用による精密化」を軸に、スマート農業を実現していくとのことです。なお、KSASの導入ユーザーは2022年12月時点で21,700軒を超えています。

同じく「DXを通じた事業展開」であげられている「KSISの展開」とは、クボタが独自開発した水環境プラント・機器向けIoTソリューションKSIS(KUBOTA Smart Infrastructure System)を指し、水環境プラントや機器の維持管理の省力化と効率化をサポートします。

上下水道などの水環境インフラを支える全国の自治体では、人口減少に伴う財政難や人手不足の問題を抱えながら、施設老朽化や事前災害への対応などの課題に直面しています。

KSISの利用により、水環境のインフラ施設・機器の監視・制御や、作業の効率化・自動化による省人化、AIを活用した設備機器の長寿命化、LCC(ライフサイクルコスト)の低減などが可能になります。

DX推進の合弁会社をアクセンチュアと設立

共通テーマとしてのDX推進について、「ビジネスプロセス変革」では「MS Azureの活用」「SAP S/4のグローバル展開」を進めるとしています。

クボタは2020年3月、DXの推進に向けてマイクロソフトと戦略的提携を行うと発表。この提携で、クボタのITインフラやSAPなどの基幹システムを、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を基盤とするクラウドに移行しています。

またクボタは、マイクロソフトと協力して新たに「AI Machine Learning Labプロジェクト」を立ち上げ、AIソリューションを開発する新たな技術者の育成や、社内の業務革新、食料・水・環境分野における新サービスの構築を目指すとしています。

「DXを通じた働き方改革」では、Google Appの活用による時間や場所にとらわれない働き方の実現、社内コミュニケーション拡充、社内外でのコラボレーション推進を行うとしています。

また、マテリアリティのひとつ「従業員の成長と働きがいの向上」のありたい姿として「従業員が自らの成長と社会や仲間への貢献を実感できるための文化、制度、仕組みを整え、働きがいを持って意欲的に取り組む組織」を掲げ、達成指標のひとつに「DX人財」をあげています。2022年度の実績は、DX人財638人。2024年12月までにこれを1,000人にするとしています。

DX人財については統合報告書2023の中で、社外取締役の荒金久美氏が「IT関連子会社を本社に取り込むことでDX人財を補強し、水・環境関連の子会社を統合するなど人財ポートフォリオの底上げを図っています」と発言しています。

クボタは2022年9月から、アクセンチュアとの合弁会社「クボタデータグラウンド」を、クボタグループのDXを推進する戦略機能子会社として事業を開始。一方、2023年4月にはシステム子会社のクボタシステムズを本体に吸収合併し、600人弱のDX人財を本体に呼び寄せています。

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考察記事執筆:NDX編集部

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