キリングループのDX:長期経営構想の実現に向けて食・医・ヘルスサイエンスの「全ての部門で自律的にデジタル活用」 | NEXT DX LEADER

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キリングループのDX:長期経営構想の実現に向けて食・医・ヘルスサイエンスの「全ての部門で自律的にデジタル活用」

キリン一番搾り やわらか仕立て 新ビール感想篇 堤真一 石田ゆり子 より

キリンホールディングスは1907年、麒麟麦酒として設立されました。1928年には清涼飲料の製造を開始。1970~80年代にかけて事業の多角化を行い、90年代以降はグローバル展開を進めました。2007年に純粋持株会社制を導入し、現在の社名となりました。

現在のセグメントは、麒麟麦酒などの「国内ビール・スピリッツ事業」、キリンビバレッジなどの「国内飲料事業」、LION PTY LTDなどの「オセアニア酒類事業」、協和キリンなどの「医薬事業」、メルシャンや協和発酵バイオ、ファンケルなどの「その他」の5つです。(NEXT DX LEADER編集部)

長期経営構想で「ヘルスサイエンス領域の強化」打ち出す

キリングループは2019年2月、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」を策定。2027年に目指す姿として「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」を掲げました。

「キリングループ 2019-2021年中期経営計画」(2019年2月)より

「キリングループ 2019-2021年中期経営計画」(2019年2月)より

CSVとは「Creating Shared Value」の略で、顧客や社会と共有できる価値の創造を意味します。また、「食」は既存の主軸である酒類・飲料事業を指し、「医」領域の新規事業による新たな収益確立と事業ポートフォリオの変革を目指しています。

そして、持続的な成長に向けてグループの事業領域を3つに再定義。「食領域」「医領域(医薬事業)」に加え、発酵&バイオテクノロジー技術を活かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げるとしています。

「キリングループ 2019-2021年中期経営計画」(2019年2月)より

「キリングループ 2019-2021年中期経営計画」(2019年2月)より

「2019年-2021年中期経営計画」では、既存事業の利益成長に加え、「医と食をつなぐ事業」の立ち上げと育成を推進。「2022年-2024年中期経営計画」では「食領域の利益増大」「ヘルスサイエンス領域の規模拡大」「医領域のグローバル基盤強化」を重点課題としています。

「キリングループ2022年-2024年中期経営計画」(2022年2月)より

「キリングループ2022年-2024年中期経営計画」(2022年2月)より

2023年3月期のセグメント別売上収益(その他・内部およびセグメント間取引消去後)の構成比は、国内ビール・スピリッツ事業が最大で33.4%。次いで、医薬事業が20.0%、オセアニア酒類事業が12.9%、国内飲料事業が12.2%。その他が21.6%でした。

一方、同事業利益(全社費用・セグメント間取引消去前)の構成比は、医薬事業が33.7%と利益創出に占める割合が最も大きく、国内ビール・スピリッツ事業が30.5%、オセアニア酒類事業が12.9%など。同事業利益率は、医薬事業が20.7%で最も高く、オセアニア酒類事業が12.3%、国内ビール・スピリッツ事業が11.3%などとなっています。

顧客情報の「グループ共通プラットフォーム」を開発

長期経営構想「KV2027」では、戦略の枠組みの中で、イノベーションを実現する組織能力として「お客様主語のマーケティング力」「確かな価値を生む技術力」「多様な人材と挑戦する風土」とともに「価値創造を加速するICT」をあげています。

この実現に向けて、キリングループのDX戦略は「全ての事業・機能部門で自律的にデジタル技術を活用してプロセスの変革やビジネスの創造を行えている」状態を目指し、「既存事業の価値創造」「新規ビジネスの加速・開発」と、それを実現する「業務プロセス変革」を進めるものです。

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

DXによる「価値創出のフレームワーク」としては、「データ化/データ連携」「データ活用」「変革」の3つのフェイズを設け、それぞれに「コストダウン」「バリューアップ」の方向性に、計6つの推進テーマを掲げています。

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

まず、コストダウンのための「業務内容のデジタルデータ化」の取り組みとして、「基盤システムの再配置」を推進。「経理」「生産」「物流」の3領域でSAPを導入し、業務をパッケージに合わせて独自機能(アドオン)を最小限にするとしています。

3領域以外の業務(営業や人事、調達など)でも複雑化したアプリ群を見直し、クラウドサービスを中心に再配置。複数の業務でデータをつなげられるように、データの持ち方を共通化する取り組みも行っています。

DX戦略推進室がグループ会社の取り組みを支援

DXによる「業務の効率化」「業務プロセス変革」については、グループの全事業領域およびバリューチェーン上の全機能(R&D、調達・生産、物流、販売・マーケティング、プロダクト・サービスおよび人事、総務、経理、法務など)を対象とし、メーカーとしての生産性向上を目指しています。

例えば、ビール工場では、総合検査機メーカー・オムロン キリンテクノシステム社のセンサーを活用し、缶商品パッケージングライン製造設備の「異常兆候管理」を実施。年間約200時間の点検業務時間の削減が実現したほか、現場担当者の熟練度に左右されずに設備点検を行えるので、設備不調の早期検知や生産ラインの安定稼働、稼働効率化が実現しているとのことです。

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

また、ビール製造の醸造工程においてAIを活用することで、最適なろ過計画を立案するシステムを開発しました。それまで6.5時間かかっていた計画業務を、最短55分に短縮。今後は全9工場へ展開し、ツール改善を進めて年間最大3,000時間の削減を目指しています。

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

このほか、キリングループでは多種多様なDXの取り組みが行われていますが、その裏には、2020年4月に新設された「DX戦略推進室」の存在があります。

DX戦略推進室がグループ各社・機能部門のハブとなり、全領域における横断的なDX=「攻めのIT」の取り組みを推進。あわせて、「守りのIT」を担う情報戦略部や、「保守・運用」を行うキリンビジネスシステムと相互連携する体制をとっています。

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

「キリングループのDXに関する取り組み」(2021年9月16日)より

この情報3部門から、DX戦略策定・推進の支援を行う「事業統括」と、営業・生産などの領域軸の取り組みをサポートする「ICT担当者」を立て、事業会社ごとのDX戦略策定や推進を支援しています。


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考察記事執筆:NDX編集部

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