ブリヂストンのDX:独自のデジタルプラットフォーム「T&DPaaS」にソリューションを載せてタイヤ事業をサービス化 | NEXT DX LEADER

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ブリヂストンのDX:独自のデジタルプラットフォーム「T&DPaaS」にソリューションを載せてタイヤ事業をサービス化

見つかる100人のちゃんと買い 23年改訂(30秒) より
「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

ブリヂストンは1931年に設立された自動車タイヤのメーカーです。2022年12月期の売上収益(IFRS)は4兆1100億円で、国内では2位の住友ゴム工業(約1.1兆円)に大きく差をつけて首位。世界的にも最大手で、仏ミシュラン、独コンチネンタル、米グッドイヤーとともに4強を形成しています。

報告セグメントは地域別で、売上高構成比は米州が45.7%、日本が23.8%、欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカが20.0%、中国・アジア・大洋州が10.0%(セグメント間消去前)。海外売上比率は76.2%を占め、海外生産比率も7割を超えています。(NEXT DX LEADER編集部)

タイヤの製造販売をコアに「ソリューション」で成長

財(製品)別の売上高構成比は、PS(乗用車用)/LT(小型トラック・バス用)が54.3%と過半数を占めており、次いでTB(トラック・バス用)が25.2%。鉱山・建設車両用などのSpecialtiesが13.3%、その他が7.2%となっています。

「2022年決算説明会」(2023年2月16日)より

「2022年決算説明会」(2023年2月16日)より

営業利益率はSpecialtiesが最も高く23.4%、PS/LTが12.3%、TBが10.2%です。なお、TBにはリトレッド事業(一次寿命を終えたタイヤの表面を削り、新しいゴムを貼り付け再利用する更生タイヤ事業)を含みます。

2020年7月に発表した「中長期事業戦略構想」では、この区分けをさらに分類し直し、製品区分に横串を通すように、A(タイヤ・ゴム)をコア事業、B(タイヤセントリックソリューション)とC(モビリティソリューション)を成長事業として戦略上の位置づけを明確にしています。

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

◆A:タイヤ・ゴム “モノ”を創って売る
高付加価値品(断トツの商品)を生産・販売する事業(※ブリヂストン事業戦略の全てのベース)

◆B:タイヤセントリックソリューション “価値”を創って売る
タイヤ・ゴム/タイヤデータを活用し、高付加価値を提供する事業

◆C:モビリティソリューション “システム価値”を創造して売る
タイヤ・ゴム/タイヤデータ/モビリティデータを活用し、新しい価値を提供する事業

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

ブリヂストンでは「DX戦略」という名称の戦略は策定していませんが、コア事業の効率性、生産性向上と、成長事業の付加価値向上のために、さまざまなデジタル技術を活用しており、事業全体でDXを実現しているといえます。

「Tirematics」でタイヤの空気圧と温度を遠隔モニタリング

中期事業計画(2021-2023)では、コア事業を「プレミアムタイヤ事業」、成長事業を「ソリューション事業」と定義し、2023年には売上比率でタイヤ80%に対し、ソリューションの割合を20%にまで高めることを目指しています。

「中期事業計画進捗」(2022年8月10日)より

「中期事業計画進捗」(2022年8月10日)より

「創って売る」プレミアムタイヤ事業は、ENLITEN(エンライトン)ビジネス戦略」を推進・強化。エンライトンとは、タイヤ重量の大幅軽量化を図ることで、省資源化やタイヤの転がり抵抗低減により環境負荷を低減し、ハンドリングなどの運動性能との両立を可能にするタイヤ基盤技術です。

特にトラック・バス用は、タイヤそのものだけでなく、更生タイヤといわれるリトレッドを行うことで、原材料使用量を約50%削減、タイヤ製造過程におけるCO2排出量の約50%削減に貢献します。

「中期事業計画進捗」(2022年8月10日)より

「中期事業計画進捗」(2022年8月10日)より

このほか、タイヤ骨格部の材料や構造を商品間で共有し、トレッド部(タイヤの表面)でタイヤ性能をカスタマイズ・差別化するBCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)を本格導入し、生産性向上とコスト最適化、環境負荷低減を図っています。

生産面では、既存工場を環境負荷が低く自動化を進めた「グリーン&スマート工場」にアップグレードしています。

サポート面では、日本全国約900拠点のリアルなサービスネットワークでサポートを行うとともに、デジタルソリューションツールTirematics(タイヤマティクス)」によってタイヤの空気圧と温度を遠隔モニタリングする体制を整えています。

Tirematicsは、タイヤの内圧情報をクラウドを通じてトラック・バス事業者の運行管理者等と共有するモニタリングツール。異常があれば運行管理者等へアラートメールを届け、パンクや故障などタイヤ起因のトラブルの未然防止を図ります。

これにより、車両稼働の最大化につなげるとともに、タイヤメンテナンスに関する整備の軽労働化や経済性向上にも貢献。資源生産性や資源循環の向上、CO2排出量の削減などにもつながります。

プラットフォーム上にさまざまなソリューションを搭載

ブリヂストンは2022年8月に発表した「2030年長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」の中で、「戦略マップ」を掲載しています。

「2030年長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」(2022年8月31日)より

「2030年長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」(2022年8月31日)より

コア事業である「プレミアムタイヤ」と、成長事業である「タイヤセントリックソリューション」「小売サービスソリューション」の間には、「独自のリアル×デジタルプラットフォーム」の基盤が通っています。

このプラットフォームを、ブリヂストンでは「Bridgestone T&DPaaS」と呼んでいます。T&DpaaS(ティーアンドディパース)とは「Tire and Diversified Products as a Solution」の略で、顧客課題の解決策としてのタイヤと多様な製品群という意味です。

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

このプラットフォームによって、主力商材のタイヤを、商品の売り切りではなくサービスとして提供するビジネスに変えていきます。T&DPaaSに搭載されているソリューションは、前出の「Tirematics」のほか、例えば以下のようなものです。

WebfleetSolutions(車両管理システム)
2019年に買収した欧州No.1のデジタルフリートソリューションプロバイダー。フリートとは運送事業者のことで、デジタル技術を活用して運行管理サービスを提供します。

Azuga(車両管理システム)
2021年に買収した米国のデジタルフリートソリューションプロバイダー。GPSトラッキングやテレマティクス(移動体通信システムを利用した情報サービス提供)、ドライバーの動作モニタリングなど、最新鋭のフリート運行管理プラットフォームを、6,000を超える北米の運送事業者に提供しています。

Toolbox(タイヤデータベースプラットフォーム)
ブリヂストンのスタッフが運送事業者を訪問した際に取得する基本情報や装着タイヤ情報、タイヤ点検結果、テストタイヤ等の情報を管理するツール。登録情報の分析により、最適なタイヤと使用方法を運送事業者に提案でき、安全運行とトータルコストの最小化に貢献します。また、ユーザーニーズに即したタイヤ開発にも活用できます。

BASys(リトレッドタイヤ用デジタルソリューションツール)
顧客の使用済のタイヤをリトレッド(更生)工場で預かり、検査、修理、加工を経て返却するまでの製造、品質、在庫などに関する情報を管理するツール。生産性・品質向上のほか、蓄積データの分析で、より高い精度で顧客の使用条件に応じた最適なタイヤを推奨することが可能となり、安全運行とトータルタイヤコストの最小化に貢献します。

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

「中長期事業戦略構想」(2020年7月8日)より

このほか、サブスクリプションサービスのMobox(モボックス)」や、運送事業者向けサービス提供プラットフォームREACH(リーチ)」といったサービスも、T&DPaaSに搭載されています。なお、Moboxによるサブスクリプションの契約数は、欧州実績で2021年3月期第1四半期までに2万9000件獲得しており、今後は中近東や米州、アジア、日本においてグローバルに展開を加速していくとのことです。

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考察記事執筆:NDX編集部

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