ミスミグループ本社のDX:独自のデジタルツールで「確実短納期」と「ムダな工数削減」を実現 「時間価値の提供」目指す
「meviy(メビー)」テレビCM「メビーな後輩」篇 30秒 よりミスミグループ本社は1963年、電子機器およびベアリング等の販売を行う三住商事として設立されました。1977年の「プレス金型用標準部品」のカタログ創刊を皮切りに、80~90年代に「プラスチック金型用標準部品」や「自動機用標準部品」「FA用加工部品」「コンピュータ&ネットワーク部品」などのカタログ販売を拡げました。
1989年にミスミに商号変更し、1994年に東証二部、1998年に東証一部(現プライム)に市場変更、2005年にミスミグループ本社へ商号変更。2010年代以降はWEB戦略などデジタル化を進めました。現在は日本国内だけでなく、グローバルに102の営業・物流・生産拠点を置き、海外売上比率は50%を超えています。(文責:NEXT DX LEADER編集部)
「メーカー事業」と「流通事業」を併せ持つ
ミスミグループは「インダストリアル・オートメーション産業」を事業ドメインとし、「生産間接材のワンストップ購買」を掲げ、メーカー事業と流通事業により、クライアントに「確実短納期」と「ムダな工数削減」による「時間価値」を提供しています。
2022年3月期の連結業績は過去最高を更新。2023年3月期は売上高が前期比1.9%増の3731億円となりましたが、新基幹システムの導入など攻めの施策に関わる投資・費用増もあり、営業利益は同10.7%減の466億円、当期利益は同8.7%減の342億円となりました。
報告セグメントは、FAなどの自動機の標準部品を主に扱う「FA事業」と、自動車や電子・電気機器などの金型部品を主に扱う「金型部品事業」(以上メーカー事業)、流通事業として3,000社以上の他社メーカーを含む幅広い製品を扱う「VONA事業」の3つです。
メーカー事業(FA事業/金型部品事業)では、紙カタログやオンラインカタログで部品の型番や寸法を指定するだけで、商品の注文ができるしくみになっています。また、部品の半製品を大規模な工場で大量生産し、消費地でクライアントの注文どおりに最終仕上げを行うことで、低コストと確実短納期を実現しています。
2023年3月期のセグメント別売上高は、「FA事業」が1219億円(構成率32.7%)、「金型部品事業」が791億円(同21.2%)、「VONA事業」が1721億円(同46.1%)。同営業利益構成率では、「FA事業」が45.9%、「金型部分事業」が18.7%、「VONA事業」が35.4%でした。
紙カタログ、WEBから「3D-CAD連携」へ
ミスミは「紙カタログ」による部品の通信販売を行っていましたが、2010年から「WEB戦略強化」を行い、オンラインカタログで商品バリエーションのフル検索を行い、発注まで行えるしくみを作りました。
さらに2016年からは、WEBに続く「第3のメディア」として、設備設計担当者が使用しているCADを位置づけ、3つの「3D-CAD連携サービス」の拡充を加速し、部品調達領域における製造業DXを推進しています。
1つめは「meviy(メビ―)」で、図面をアップロードするだけでAIが即時見積もりを行い、最短1日で部品が届く「2D図面加工品サービス」です。2016年にサービスを開始し、2023年には「ものづくり大賞」内閣総理大臣賞など数々の賞を受賞しています。
meviyは、フロントエンド(顧客側)の「AI自動見積もり」と、バックエンド(製造側)の「デジタルものづくり」の機能の掛け合わせで実現。前者は「形状認識エンジン」と「価格計算アルゴリズム」によって構成され、後者は100万行超の製造パラメーターを定義することで設計データから製造プログラムを自動生成することが可能です。
ものづくりのバリューチェーンにおいて、「設計」や「製造」「販売」の領域はデジタル化による生産性向上が進む中、「調達」領域は紙の図面によるアナログ作業が残っており、meviyがこの領域のDX推進を実現しています。
さらなるmeviyの開発加速に向けて、ミスミグループはシステム開発を手掛けるコアコンセプト・テクノロジー社と合弁会社「DTダイナミクス」を設立し、2022年10月に事業開始。欧州への本格展開を開始し、2022年度には米国、韓国、中国への展開完遂を予定しています。
設計者の「ムダな工数」を削減するソフトを提供
「3D-CAD連携サービス」の2つめは「MiSUMi RAPiD Design(ラピッドデザイン)」。FA設計者向けの3D-CADソフトと連携するアドオンソフトです。2018年にサービス開始し、2022年にフルリニューアルしました。
これまでクライアントが部品の設計や商品選定、見積もりを行う際には、CADとオンラインカタログを往復する必要がありました。
RAPiD Design には、FA用メカニカル部品(生産・自動化設備や装置用部品)を450万点収録した3D-CADデータライブラリーが含まれており、部品選定からCADデータの入手、見積もりまでをCAD上で完結できます。
3つめは「MiSUMi FRAMES(ミスミフレームズ)」で、簡単なマウス操作で直感的にアルミフレームを用いた筐体を設計・発注できるインストール型のソフトです。2020年にサービスを開始しました。
ソフトにはCAD用のデータライブラリーが含まれており、設計者はCAD上で部品選定、設計、見積もりまでを完結。筐体設計時間を最大90%削減することが可能です。
VONA事業では「品揃え改革」に取り組んでいます。中国でミドルレンジ需要が拡大していることを踏まえ、価格競争力の高い「エコノミーシリーズ」を投入し、中国域内や日本、アジアでの浸透加速を図っています。
新基幹システム「NEWTON」を構築し現地法人へ展開
ミスミグループでは2020年10月に、CIO・常務執行役員の佐藤年成氏が代表執行役員を務める「デジタルトランスフォーメーション(DX)システムプラットフォーム」を創設し、デジタル革新に向けたIT組織体制を強化しています。2021年度からは、基幹システムの全面刷新を本格的にスタート。計200億円規模の投資を行い、世界展開をしていく予定とのことです。
ミスミグループでは、受発注や在庫管理、会計管理などを行う基幹システムを1989年に構築。メインフレームで運用してきましたが、2020年に基幹システムをオープン化し、プラットフォームにアマゾンウェブサービス(AWS)を採用しました。
さらに基幹システムを再構築する「NEWTONプロジェクト」を立ち上げ、新アーキテクチャで全面刷新。主要機能をマイクロサービス化して疎結合化し、取引情報の管理・統制にはSAP S/4HANAを採用して、Google Cloud上に構築。2025年をめどに世界の全現地法人へ順次展開していく予定です。
これにあわせて、全社的なDXに向けてグループ全体で社員のITリテラシー強化に取り組み、全社員向け、開発者向けの講座など、用途にあわせた実務直結型の教育内容を充実し、社員のプロジェクト管理能力の強化や、業務プロセス効率化の取り組みも強化するとのことです。