ダイキン工業のDX:空調の運用管理含む「コト売り」で事業拡大目指す 社内講座でAIやIoT技術者の育成も | NEXT DX LEADER

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ダイキン工業のDX:空調の運用管理含む「コト売り」で事業拡大目指す 社内講座でAIやIoT技術者の育成も

「空気の可能性・運動効率を高める空気」【ダイキン】 より

ダイキン工業は1924年、合資会社大阪金属工業所として設立。1951年に日本初のパッケージ(業務用)エアコンを開発。1963年に現在の社名に変更しました。2000年代から海外企業の買収で事業を拡大し、現在は事業展開国数が173カ国、海外売上比率は83%にのぼります。

事業セグメントは、住宅用・業務用・舶用の「空調・冷凍機事業」、冷媒のフルオロカーボンガスやフッ素樹脂などの「化学事業」、産業用油圧機器などの「その他事業」の3つを展開。空調分野の売上高はグローバルでNo.1です。(NEXT DX LEADER編集部)

社長が言明「デジタル技術の活用がライバルとの勝敗を握る」

ダイキン工業の2023年3月期決算は、売上高が3兆9816億円、当期純利益が2578億円と、いずれも2期連続で過去最高を更新しています。

セグメント別構成比は、主要事業の「空調・冷凍機事業」が売上高の91.2%、営業利益の86.1%とほとんど全てを占めていますが、同事業の営業利益率8.9%に対し、営業利益の12.0%を占める「化学事業」は17.2%と高い水準となっています。

ダイキン工業はリーマンショック後、10期連続増収を実現。2021年3月期の業績はコロナ禍で落ち込んだものの、翌期からV字回復し当初計画を大きく上回る成長を続けています。

「FUSION25 後半3ヵ年計画」(2023年5月31日)より

「FUSION25 後半3ヵ年計画」(2023年5月31日)より

ダイキン工業は2021年6月、2025年度までの戦略経営計画「FUSION25」を策定。9つの重点戦略テーマを掲げています。

戦略経営計画「FUSION25」説明会(2021年6月7日)より

戦略経営計画「FUSION25」説明会(2021年6月7日)より

計画説明会の中で、代表取締役社長兼 CEOの十河政則氏は、現在の経済・産業・社会の4つの構造変化のひとつとして、「デジタル技術活用の必要性」に言及しています。

「4点目は、デジタル、AI、5G、ロボット等々の技術の革新的進歩や、その最新技術を使ったビジネスモデルの出現であります。その中でも、とりわけデジタル技術の進展には目覚ましいものがありまして、デジタル技術を活かして、いかに事業活動全体を変革できるかというのが、ライバルとの勝敗を握ると言っても過言ではないと思っています」

なお、「FUSION25」は、2023年5月に研究開発費、設備投資とともにデジタル投資の計画を見直して増額したほか、後半3カ年計画の重点テーマとして「インドの一大拠点化」「化学/高機能材料・環境材料のリーディングカンパニーへの挑戦」の2つを追加し、計11テーマとしています。

「空調バリューチェーン」全体で顧客とつながり続ける

「FUSION25」では、経営基盤強化に関する重点戦略テーマ「変革を支えるデジタル化の推進」の中で、デジタル技術を活用することで「ビジネスイノベーション」「プロセスイノベーション」を創出するとしています。

戦略経営計画「FUSION25」説明会(2021年6月7日)より

戦略経営計画「FUSION25」説明会(2021年6月7日)より

プロセスイノベーションに向けた取り組みとしては、企画・設計プロセスを管理する「エンジニアリングチェーンマネジメント」と、生産・流通プロセスを管理する「サプライチェーンマネジメント」の改革、「開発プロセス」の革新、人事・経理など「経営基盤の高度化」に向けたシステム構築、そしてRPAやAIを活用した「間接業務の効率化」があげられています。

このうち、サプライチェーンマネジメント(SCM)の改革については、経営基盤強化の「強靭なサプライチェーンの構築」の中でも言及されており、デジタル活用によりサプライチェーン情報を一元化し、最適なSCMを実現するとしています。

「ダイキングループ サステナビリティレポート2022」では、コロナ禍でもグローバルな供給調整を円滑にできた要因として、日本の調達・生産・開発・財務の責任者と、海外各拠点の生産部門長らが傘下する会議でリスク情報を共有し、サプライチェーン上の供給数と2次サプライヤ以降の在庫数を一元管理して対策を即断即決できたため、としています。

「ダイキングループ サステナビリティレポート2022」より

「ダイキングループ サステナビリティレポート2022」より

ビジネスイノベーションに向けた取り組みのひとつめは、「ソリューションビジネスを拡大するため、データをつなぎ、解析するためのプラットフォームを構築」で、空調ライフサイクル全体で価値を提供するための顧客情報管理のしくみづくりが例示されています。

この取り組みについては、「FUSION25」の成長戦略のひとつ「顧客とつながるソリューション事業の推進」の中でも言及されています。

戦略経営計画「FUSION25」説明会(2021年6月7日)より

戦略経営計画「FUSION25」説明会(2021年6月7日)より

従来から行っていた開発・生産~施工の「機器事業」に、保守・点検や運用管理、改修・更新などを含む「基本/付加価値サービス」「更新・ターンキー」などのソリューションを含む「コト売りのビジネスモデル」を確立し、空調バリューチェーン全体で顧客とつながり続け、事業拡大と収益性向上を図るとしています。

空調機にセンサーやカメラを組み込み情報収集も

ビジネスイノベーションの取り組みのふたつめは、「機器のコネクテッド化を推進し、機器データを取得することに加え、外部とも連携しながら、人や建物のデータなど、今後の事業拡大につながるデータを取得」するとしています。

ダイキン工業は2018年2月より、空調機から得られるデータを活用し、さまざまなパートナー企業と協業するための協創型プラットフォーム「CRESNECT(クレスネクト)」を開設し、プロジェクトを運営してきました。

業務用空調機をオンラインで遠隔監視し、室内温度や運転状態等のデータ取得・分析を行う「エアネットサービス」のほか、空調機にセンサーやカメラを追加で組み込み、温度や湿度、空間の明るさや音、人の数や位置、動き方などの情報を収集し、プラットフォームに蓄積してパートナー企業も利用できるようにします。

空気・空間のデータを活用した協創プラットフォーム『CRESNECT』を開設(2018年2月21日)より

空気・空間のデータを活用した協創プラットフォーム『CRESNECT』を開設(2018年2月21日)より

2019年7月には、大手企業とともに「CRESNECT」を活用した未来のオフィス空間づくりを目指すプロジェクトを立ち上げ、東京・丸の内に会員制コワーキングスペース「point 0 marunouchi(ポイントゼロ マルノウチ)」を開設しています。

未来のオフィス空間『point 0 marunouchi』において実証実験を開始(2019年7月8日)

未来のオフィス空間『point 0 marunouchi』において実証実験を開始(2019年7月8日)

「point 0 marunouchi」は2020年12月、空間のデザイン・構築・運用に「人間の健康」の視点を加え、より良い住環境の創造を目指したオフィス空間の評価システムである「WELL認証」のゴールドランクを取得。ダイキン工業は、理想の空気が届く「空気」支援パッケージを提供しています。

また、デジタル化の推進に向け、2023年度末までに1,500人のデジタル人財の育成を目指すとしています。この取り組みを支える「ダイキン情報技術大学」は、AIやIoT分野の技術開発や事業開発を担う人材を育成する社内講座で、大阪大学の教授がダイキン社員を教育し、デジタル活用を推進する中核的な人材を育成することを目指しています。

「ダイキンのDX人材育成」(2022年2月16日)より

「ダイキンのDX人材育成」(2022年2月16日)より


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YouTube:「空気の可能性・運動効率を高める空気」【ダイキン】

考察記事執筆:NDX編集部

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