現代では、インターネットは生活必需品だ。しかし、マンションでインターネット関係の設備が整えられるようになったのはまだ最近のこと。現在でも、インターネット使用が多い時間帯になると回線速度が極端に遅くなるマンションも存在する。今回話を聞いた40代男性が暮らすマンションも、その一つだ。(取材・文:広中務)
前に住んでいたアパートよりも通信速度が遅くなった
男性が23区西部の中古マンションを購入したのは2014年のことだった。
「2009年に結婚して、そろそろ子どもをということで物件を探しました。結局1年くらいかけて、かなり理想的な物件を見つけたんです」
男性が購入したのは、9階建てのマンションの8階の部屋。約70平米で3LDKの角部屋だ。
「中古のマンションですが、建てられたのが2000年なので、まったく古さは感じませんでした。管理会社は丁寧に管理してくれますし、住人同士は見知らぬ人でも挨拶する習慣があるので、住環境はとても気に入っています」
そんな理想的なマンションだが、唯一盲点だったのがインターネットの設備だった。
「自分はNTTしか信用していません。それまで夫婦で暮らしていたアパートでも、大家さんの許可を得てフレッツ光を導入していました。なのでマンションに引っ越ししてすぐ、固定電話と、フレッツ光の工事に来て貰いました。そうしたら工事の際に、このマンションはVDSL方式になると告げられたんです。それで前に住んでいたアパートより遅くなると聞いて、かなり残念な気分になりましたね」
VDSLとは、マンションやアパートなどの集合住宅で採用されている光回線の配線方式のこと。上り速度は50~100Mbps、下り速度は100Mbps前後。つまり最大通信速度は100Mbpsで、光配線方式が最大1Gbpsや2Gbpsと爆速なことに比べると、低速なのは否めない。それでも、一部のオンラインゲームを除けば十分快適なネット環境にはなるはずだが……。
ネットに詳しくないと言っていた男性だが「速いほうがいい」という素朴な思いはあったようだ。
住人のお家時間の増加? コロナ禍から激重に
それでも「自宅でよく観るのはYouTubeくらいだった」という使い方だったため、夕方から夜にかけて「ちょっと遅いな」と感じる程度だったそう。ストレスを感じるようになったのは、コロナ禍以降である。
「家にいる時間も長くなったんでAmazonのFireTVStickを購入し、有料配信もいろいろ契約して毎日、夫婦で映画やドラマを観たり、子どもとアニメを観るようになったんです」
今はAmazon Prime Videoだけでなく、Netflix、U-NEXT、Disney+にも契約しているので、かなりハマっているようだ。
「きっと、その頃から他の住人も自宅滞在時間が長くなり、ネットや配信番組を楽しむようになったんだと思います。とにかく、夕方以降、23時くらいまでネットにつながりにくくなったんです」
一体どのような状況なのか。
「まったくつながらないときは、諦めもつくでしょう。でも、それ以外の時はイライラしてしまいます。例えば、配信番組を観ようとすると、画面が立ち上がったあとで、しばらく止まってしまうことがあります。ようやく始まったと思ったら、音声がちゃんと聞こえなかったり、いいところで急に止まったりすることが、しばしばあります」
どういうわけか、ドラマや映画のクライマックスで止まってしまうことが多いという。
本当にどのくらい遅いのかを確認するべく、回線速度を測って貰ったところ、普段は70Mbpsほどだが、夕方以降は突然「10Mbpsくらいになったり、ネットが止まったりしました」という。原因は色々あるようだが、とにかく接続が不安定になるのは確かだ。
「夕食の後で、子どもがアニメを観たいと言って、選んだ番組が始まるまでに5分くらいかかることもあります。この5分は、本当に無駄な時間だと感じています」
5分でも、それが積み重なれば大きな時間となる。そのため、彼は何か良い方法はないかと考えていた。
「ルータが原因かもしれないと思い、最新の上位モデルを購入してみましたり、FireTVStickを買い換えてみたりしましたが、速度に変化はありませんでした。無駄な出費をしてしまった自分にイラつきました」
先に記したように、マンションの環境は最高。ゆえにネット環境が酷すぎるから引越を……なんてことはまったく考えていない。
「実際、気になるのは動画配信を視聴する際の遅延くらいなのです。小さな不便だからこそ、毎回イラッとしてしまうんです」
もはや、ネットはすぐにつながるのが当たり前の時代。結果、待つことが苦手な人が増えているという。男性も知らず知らずのうちに、そうなってしまった一人なのかも。
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