女性は修士1年の冬に当時第一志望だった会社の一次面接で、「酷く客観性のない面接官」に当たってしまったという。
当時、大企業の面接は5次審査ぐらいまであり大変だったというが、大抵の企業が最終審査手前までは各地で面接会場を用意していた。しかしその企業は、一次面接から「静岡の各駅停車しか止まらない本社」に出向く必要があったという。
片道3時間かけての一次面接は5~6人の集団面接で、面接官は「いかにもキャリアっぽい、話し方が上から目線の中年女性」一人だった。面接官は
「この中から良さそうな人が居たら1人か2人ぐらい取るから、一人一人名前と所属、研究内容を1分以内で紹介して」
と言い、一人ずつ紹介が始まった。1人目は「3年生なのでまだ研究は始まっていない」とだけ発言したが、面接官は
「私同じ大学!△年前にいて~〇〇先生知ってる?何部?」
と突如ローカルトークで盛り上がり出した。「そういうフランクな面接なのか」と思っていると、2人目が説明している途中で
「あのさ、1分で話せって言ったよね?今1分。空気読めないの?」
と説教が始まり、面接室は突如緊張に包まれた。次の番だった女性は1分に収めて説明したところ、
「東大凄いね、みんなもそう思わない?でも、あなたの研究ってなんか文系っぽくない?別に良いけど」
とよく分からないアクションをされたという。そして4番目の人物が元気よく自分の研究発表をしたが、そこで面接官の反応が変わった。
「タコの研究?何それ面白そう!それどんなことしてるの?へえ!」
と質問をして深掘り始め、3分ぐらいずっとその人とだけ話し続けた後、「タコの研究面白いよね」と最後になぜか参加者に同意を求め始めたというのだ。
女性は「どうリアクションしていいか悩み続ける状況が続きました」と綴る。そして、
「あ、そろそろ終わりの時間だからさっさと最後の人自分の紹介して」
と思い出したように5番目と6番目の人に説明を促し、5番目には無反応。6番目はエントリーシートだけを見続け、
「ふ~ん。〇〇出身なんだね。□□君(1番の人)と同じの。2人でせっかくだから仲良くしたら良いじゃん」
とこれまたよく分からない反応をし、面接は15分ほどで終了した。誰の目にも、誰が通ったのかは明らかで、部屋を出たあと他の参加者は
「静岡なんてこの企業ぐらいしか受けるところないのに、わざわざ金と時間かけて来させてこの扱いは何だよ」
と口々に怒っていたという。女性自身も「第一志望の会社がこんな殿様商売のような会社だったのか」と失望したことを明かす。その面接から10年弱後、この会社で女性が志望していた部署は製品使用における事故などによる不振で撤退したという。女性は
「私にとっては結果オーライになりました。技術の会社の採用があんなものではさもありなん、と正直言って思っています」
と率直な感想を綴った。