自分は働かないくせに、人のやった仕事にダメ出しばかりしてくる上司にはウンザリする。神奈川県に住む40代後半の男性(事務・管理/年収600万円)は、監査部と共同で法令対応を行うプロジェクトチームに参加したが、監査部長がろくに仕事をしないため不満を募らせていた。
「監査部長は上役におもねるばかりの典型的なヒラメ社員。毎週末は役員とゴルフ。職場にクラブケースを持ち込み、デスクに大量のゴルフ雑誌を広げたまま仕事はせず」
監査部長がそんな調子のため、1年過ぎても制度対応のタスクは進まなかった。やむを得ず、監査部が作成するはずの書類のほぼすべてを、男性が属するプロジェクトチームが作成して乗り切ったという。(文:福岡ちはや)
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反論したら「そ、そんなことは知らん!聞いていない!」
しかし、プロジェクト終了後の4月になって事件が起きる。監査部長がわざわざプロジェクトチームのオフィスまでやって来て、プロジェクトチームが作成した書類の不備を指摘し始めたのだ。男性は監査部長の行動の動機について、
「オフィスには常勤取締役もいらっしゃるので、自身のアピールが目的だったのでしょう」
と推測する。監査部長が「いくつも書類の不備を指摘し、プロジェクトチームがいかに無能かと喧伝」するなか、プロジェクトチームのメンバーは皆うつむいたままだったという。しかし男性は、監査部長が同僚の1人を槍玉に挙げ始めたところで我慢の限界を迎え、立ち上がってこう反論した。
「今ご指摘をいただいた書面は、監査部が作成すべきものですが、そのことは理解されているのですよね?」
「その書類は、監査部が監査の途中経過をまとめ取締役会に報告する書式ですが、ご存じですよね?報告されたんですよね?」
突然の反論に監査部長は目を丸くして固まったあと、顔を引きつらせて「そ、そんなことは知らん!聞いていない!」と抗弁したという。
「報告パターンは痴漢冤罪でお願いします」と皮肉
男性は監査部長の抗弁にもひるまず、さらなる追及を続けた。
「今更、知らぬ存ぜぬはないでしょう。『早く監査を始めてください』とこちらから何度も申し上げました。あまりに繰り返したので、11月に監査部長が『監査に口出しをするな!』と言われたじゃないですか」
すると、監査部長は顔を引きつらせたまま押し黙ってしまった。そして、あろうことか男性に「……どうすればいい?」と聞いてきたそうだ。男性はしばらく黙って相手をにらんでいたというが、「では、状況を報告してください」と言い、次のように続けた。
「現時点の状況を取締役会に報告してください。報告パターンは痴漢冤罪でお願いします。(中略)ひとつ、『僕は何も知りません』。ふたつ、『僕は何もやってません』。以上です」
監査部長はしばし黙っていたが、やがて男性に皮肉られたことを理解したのだろう、急に顔を赤くすると部下に連れられてオフィスを出て行ったそうだ。その後、役員調査が入り、監査部長は「1年間課長待遇に落とされる」という降格処分を受けることとなった。
ただ、理不尽なことに監査部長を論破した男性も無事では済まなかった。「私は騒動の翌月から子会社に出向させられ、その後会社を退職しました」と結末を語る。男性の反論はもっともだが、痴漢冤罪のくだりは少々やりすぎだったのかもしれない。
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