「正直、仕事はかなり雑だった。報連相はできない、期限は守れない、現場の流れも理解していない。電話対応すら怪しく、トラブルになると周りがフォローに回る状態だった」
仕事ができないだけならまだしも、態度にも問題があったようだ。
「それでも本人はなぜか妙に自信だけはある。ミスを指摘されても『でも自分はこう思うんで』と返すタイプで、改善より言い訳が先。現場経験の長い社員が必死に尻拭いしていた」
普通の会社であれば、基礎から徹底的に叩き直すところだろう。しかし、この会社は違った。
「上層部に気に入られたのか、なぜかその新卒が異例のスピードで昇進した。現場では『あいつが?』という空気だったけど、誰も逆らえない。実力より“上にどう見られるか”が評価基準になっていた」
現場の不満をよそに、肩書きを手に入れてからはさらに調子に乗った振る舞いを見せる。
「ある日、その元新卒にこう言われた。『これで同僚だから敬語いらないっすね(笑)』」
「一瞬、耳を疑った。こっちは何年も現場で泥かぶって、クレーム処理して、後輩教育して、数字追って、休日も対応してきた」
その積み重ねを一切無視して“対等感”を出してくる相手に、男性は呆れ果てたようだ。
「もちろん敬語を使えと言いたいわけじゃない。問題は、その言葉の奥に『役職ついたからもう同じ立場っすよね』という薄っぺらい認識が透けて見えたこと」
「現場を支えてきた人間ほど疲弊して辞めていく」
男性は、これらの出来事を通して、組織としての限界を感じたようだ。
「本当に力のある人は、昇進した時ほど謙虚になる。支えてくれた人に感謝するし、自分の未熟さを理解している。でも、その会社では違った。能力ではなく“空気”で人が上がる」
謙虚さのない若手が認められ、実力のある人が報われない。そんな理不尽さの中で、当然の現象が起きているという。
「現場を支えてきた人間ほど疲弊して辞めていく。逆に、中身がなくても上に好かれれば出世できる。その時、心の底から思った。『あ、この会社、終わってるな』」
男性が会社を見限った瞬間だった。
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