20代の間で海外事業者とのマルチ商法トラブル急増 「日本の法律は適用外」と解約に応じず
同センター相談情報部の担当者はキャリコネニュースの取材に対し、こうした海外事業者とのマルチ取引に関わる相談は3年前から急増したと明かす。
「2013年度以前には年間の相談件数が1桁、2桁程度でした。システム上、海外事業者とのトラブル件数だけを抜き出すことが出来ないため概算になりますが、2014年度は約300件、2015年・2016年度には約900件ほどでした」
被害者の年齢層は圧倒的に若者が多い。2015年は65%、2016年は53%が20代からの相談だった。SNSを介して紹介され、契約書の取り交わしもせずに口車に載せられて契約してしまうケースが多いという。
元々海外でマルチ取引を行っていた会社が日本に進出してきているだけでなく、日本人が他国に事業所を設立した上で、日本国内の若者をターゲットに勧誘する事例も見受けられるそうだ。
SNSの書き込みからマルチ取引を知って契約した20代の家事従事者は、事業者にウェブサイト構築費用として約20万円を振り込んだ後、トラブルになった。システム上の不明点を問い合わせても「マニュアルを見ろ」の一点張りで答えてもらえないため解約を希望したが、利用規約に「クーリング・オフは2日以内」と書かれており、どうしたらいいかという相談だった。
大学生の例もある。彼は友人の紹介を通して海外の代理店とネット上で契約を結び、初期費用約30万円支払った。その後解約しようとしたが、サイト上の規約に「3日を超えると無条件解約できない」とあり困っているという。
収益構造に納得できない場合は契約を控える
国民生活センターが「マルチ取引は、特定商取引法の規制対象となる連鎖販売取引にあたる場合があります。連鎖販売取引にあたる場合には、海外事業者との契約であっても、日本で契約した消費者は特定商取引法上のクーリング・オフを主張できる場合があります」と呼びかける。また、トラブル回避のために個人ができる対策として、同センターの担当者は
「どういう仕組みで儲かるのか説明されなかったり、説明されても理解できなかったり、契約書を取り交わすことが無いような場合は大変危険です。そうした事業者との契約はお控えいただいた方がよろしいのではと思います」
と話す。SNS上の紹介から契約に至る場合、契約書が発行されないことも多いため、勧誘者や事業者に発行を要求し、書面を残しておくのも1つの手だ。
ビジネスモデルに納得した上で契約するのは個人の自由だが、その際も、海外事業者の問い合わせ先が国内にあるかどうかは確認したほうが良い。契約先が海外事業者だと、トラブル発生時の連絡先は海外になる。そのため、問い合わせ先の相手が日本語に不慣れだったりすると、相談の解決や解約交渉が難航する恐れがあるからだ。
国民生活センターは消費者庁取引対策課と内閣府消費者委員会事務局に、事例の注意喚起や実態調査などの実施を要望している。