牛の蹄を削る「削蹄師」の仕事、年収1000万狙えるって本当? プロに聞いた。 | キャリコネニュース - Page 2
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牛の蹄を削る「削蹄師」の仕事、年収1000万狙えるって本当? プロに聞いた。

作業の様子画像

作業の様子

そもそも、牛の削蹄はなぜ必要なのだろうか? 大沼さんはこう答える。

「乳牛も肉牛も蹄が伸びすぎてしまうと、寝起きや歩行といった動作に苦痛やストレスを感じるようになり、生産量や質の低下につながるんです。牛舎で飼育されている牛は運動量が少ない上、きちんと掃除もしていても牛舎は糞尿に晒されやすい環境なので、最悪の場合は蹄病という蹄の病気などに罹り、自力で立てなくなるリスクもあります」

削蹄で起立・歩行が改善すると、牛の餌や水へのアクセス頻度が増加する、という調査結果があるそうだ。また、怪我につながる転倒や蹄病の予防、早期発見・治療もしやすくなるという。蹄は「牛の第二の心臓」とも言われ、その管理は、牧場の経営をも左右しかねない、重要な問題なのだ。

「牛乳や牛肉の生産では牛の健康を維持することが大切で、そのためには牛の体を支える土台となる蹄の管理が非常に重要になります。削蹄の前後で牛の動作や姿勢は大きく変わりますし、そういう意味では目に見えて成果を感じやすい仕事だと思いますね。ちなみに放牧で飼育されている牛の蹄は地面との摩滅で、あまり伸びません。多少の管理は必要になりますが、牛舎で飼育される牛ほど頻繁に削蹄を行う必要がないんです」

体重500キロにも及ぶ牛を扱うのは、体力が必須となる。

「削蹄の仕事って昔は典型的な3Kと言われることもあって、けっこうキツい仕事なんです。臭いがキツくて、力仕事も多いし、牛に蹴られて大怪我をするリスクもある。個人事業主の場合は頭数をこなすほど収入が増えますが、当然、怪我を負い仕事ができなくなることもあり得ます。ベテランと呼べるような経験を積んだからといって、誰もが独立を目指すわけではなく、会社で働き続ける人も多いです」

仕事の将来性は……?


作業の様子

丁寧に仕上げていく

ちなみに、牛削蹄師の認定資格には「2級」「1級」「指導級」の3ランクがあり、それぞれ講習会を受講して、認定試験に合格しなければ取得できない。

「2級の講習では牛の肢部分の名称などを覚える”解剖”、牛蹄の病気などの疾病、基本的な削蹄の手順、保定の仕方、使用する道具や削蹄判断などを説明します。1級では、牛の立ち姿勢や蹄の形、歩き方、飼育環境といった牛ごとの特徴を見極め、より技術的な削蹄を行うための “削蹄判断”の応用を説明します。指導級は名前通り指導を行える位置付けの資格で、2級・1級の内容をより突き詰めていきます。それぞれの資格を取得するための実技講習では、原則として各地域の指導級取得者に講師をお願いしていますね」

牛削蹄師の資格は5年ごとに事務手続き上の更新が必要だが、技術的な講習や試験を受け直す必要などはないという。約50年間で累計1万1000人以上がこれらの認定資格を取得し、現在は約2800人が更新しているそうだ。

2級認定牛削蹄師の受講対象者は「18歳以上」とのことだが、畜産業界での経験が全くない人でも牛削蹄師を目指せるのだろうか?

「まずはベテラン削蹄師さんの元で助手として働き、経験を積みながら資格を得てもらうのが一番ですね。2級の認定試験を受験する人の内訳としては、農業系の大学生の割合が高く、次に畜産関連企業の従業員、酪農家や獣医と続きます。女性比率はまだまだ低いものの、最近は作業の機械化が進んだことなどもあり、少しずつ女性の削蹄師も増えてきています」

大沼氏は「将来的にも牛削蹄師の仕事は一定の需要がある」と見込む。

「企業の畜産業への参入や助成金による牛舎の機械化・大型化が推進され、畜産農家の戸数が減少しても国内の畜産牛の頭数は現状維持、もしくは微増する傾向も見受けられます。本会では年2回以上の削蹄を推奨しており、北海道など特に牛の畜産が盛んな地域では年4回削蹄する農家さんもいる。地域によっては削蹄師さんが足りず、現場を回りきれていないような現状もありますね」

厳しさもあるが、将来性も見込めるようだ。向き不向きはあるだろうが、人によっては本当に「狙い目」の仕事なのかもしれない。

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